遊行かぶき実行委員会の代表を務める 佐江 衆一さん 片瀬在住 79歳
若者に歌舞伎文化を
○…1996年から遊行寺で開催されている「遊行かぶき」が10月25日から始まる。日本の文化芸能に一石を投じ、さらなる発展を図るため2013年7月、市民有志で実行委員会を設立。「遊行かぶきは前衛的な演出方法なので、若者が見ても面白いと思う。藤沢にも、若者が歌舞伎を見る文化を作っていかないと」と使命を感じている。稽古場に顔を出しては、自身を「意見するうるさいじいさん」と言いくしゃっと笑うも、その思いは芝居を良くするためと伝わる。
○…浅草で生まれ、コピーライターを経て60年、短編「背」で新潮社同人雑誌賞を受け作家デビュー。「繭」「すばらしい空」などで5度、芥川賞候補となり注目される。思い入れの強い作品は95年に発表しベストセラーとなった「黄落(こうらく)」。両親の介護を描いた作品で、シビアな内容が共感を呼びヒット。女優の故・北林谷栄さんから「やらせてほしい」と手紙が届き、舞台化が実現。舞台には自身も出演した。「若い頃の夢は役者になること。東宝ニューフェイスに落選したから小説家になったんだよ」とお茶目に笑う。「黄落」はテレビドラマにもなり、高視聴率をたたき出した。
○…60年に藤沢へ。当時の彼女(妻)と江の島を訪れたとき、「家を建てたら結婚する」と言われ、その場で家を購入、結婚を機に片瀬へ移り住んだ。江の島を舞台にした作品も多数執筆。「背」もそのひとつだ。「片瀬は山と海に囲まれたいい場所」と50年以上執筆活動を続け、今も現役だ。
○…55歳から剣道を始め、5段の腕前を持つ。現在も師として小学校などで教えている。「やりたいことはいくつになってもチャレンジする」というように、70歳のときピースボートに乗り、3カ月半かけて世界一周をしたことも。また2年前からは乗馬にも挑戦。「死ぬまで好きなことをやりたい」―そう穏やかに笑う表情の奥に、演劇に対する熱い思いを感じた。
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