平等院鳳凰堂の国宝「雲中供養菩薩像」26体を模刻し、奉納を終えた 村上 清さん 渡内在住 43歳
感動を生む仏像を 後世へ
○…平等院鳳凰堂に懸架されている国宝「雲中供養菩薩像」26体の模刻を手掛け、10年間の集大成を迎えた。「責任重大なプロジェクトに震え上がるような緊張感がありましたが、ごく自然体で取り組み、全うすることだけに集中していたので、静かに終えられた」と穏やかな表情。「自分は本当に恵まれている。仏さんを彫って修復することで、きっと仏さんに守られているんですよ。それだけに仏像に対する真摯な姿勢は誰にも負けないと思います」。秘めた情熱が垣間見える。
○…愛知県常滑市出身。東京芸術大学彫刻科を経て大学院に進むも模索の日々が続いた。基本に立ち返るべく文化財の修復コースへ再入学したことが転機に。「文化財になるような仏像は何千年も前から人々の心を救い、時には時代や社会を変えてきた素晴らしいもの。全く足元に及ばないと感じさせられながらも、模刻を生業として社会貢献ができると気づいてからは必死でした」。模刻は、仏像に込められた祈りや作り手の感性、技術、魂が宿る臨場感まで再構築する奥深い作業だ。ましてや「文化財が師匠」というだけに、その重責は計り知れない。
〇…「この像も楽しかったし、これは琴を弾いている姿が印象的で…」と手掛けた菩薩像について愛おしそうに語る。全てに思い入れがあるが、仏と縁を結ぶという概念「結縁(けちえん)」の下、仏像に触れられる企画展で展示された像は特に感慨深い。「涙を流して拝む人や皇后美智子様にも触れて頂いた。そんな仏像を制作でき、関われたのは名誉なこと」
〇…湘南のゆったりとした雰囲気に惹かれ、8年前に家族と共に藤沢へ。現在は6年後の東京五輪を見据え、両国国技館に程近い寺院の仁王像に着手している。「訪れる世界中の人に日本の文化財を発信していきたい。人を感動させ、文化財の継承という責任が担えれば」。真摯に向き合い、人々が自然に手を合わせるような仏像を彫り上げていく。
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