藤沢市指定重要文化財に指定された遠藤焼米つき唄などを継承する「遠藤農作業唄保存会」の会長 伊澤 孝子さん 遠藤在住 75歳
地域の宝、次世代へ
○…「〽ハァー見上げてみれば宝泉寺 ハァヨイトサノサッサ」、4拍子の唄に合わせて3本の杵を3拍子で打つ。戦前、農作業唄の一つとして歌われたこの「遠藤焼米つき唄」などを民俗芸能として今に伝えている。文化財指定を受けて今後、遠藤地区外からも上演依頼が増えることが見込まれ、「忙しくなるけれど、素朴な雰囲気で続けていきたい」と微笑む。
○…綾瀬の農家から21歳の時、藤沢の農家へと嫁いだ。日本初の自動車専用道路が開通し、横浜マリンタワーが開業するなど経済成長の真っただ中だったが、「ここには水道も電話もなくて」と当時を振り返り苦笑い。全て手作業で行う忙しい農作業の傍ら3人の息子を育てた。そんな時、地域の文化祭で目にしたのは義母が遠藤焼米つき唄を上演する姿。「こんなに良い唄が」と思った記憶が今も残っているという。
○…保存会は1977年に発足。メンバーだった義母が亡くなった後、13年経ってから誘いを受けて加入した。一昨年に文化財指定を目指す動きが出てからは若手5人も加わり、現在は発足以来最多の15人に。「若い人が入ると違う。先輩を立てつつも和やかな雰囲気」と話す。唄には譜面がないため聞いて覚えるのが基本。月に1度の稽古ではみっちり練習し、その後、昔話や孫の話に花が咲く。「『これが張り合い』と話す先輩もいる。元気の源の一つ」
○…「好きなことをすること、仕事があること」が健康の秘訣だという。「今は草むしり専門だけど」と夫と息子が営む植木の仕事を手伝い、20年間続けている新舞踊の練習にも週に1度出向く。「振りを覚えるのは脳に良くて、楽しい」と笑顔。県指定の民俗芸能になっている「ささら踊り」の保存会にも参加し、舞台に立つこともある。「指定を受けたからには継続が大事。人数を減らすことなく活動を続けたい」。会長として気を引き締め、地域の宝を次世代に伝えていく。
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