50周年を迎えた「たぶろう美術協会」の会長を務める 並木 望さん 藤が岡在住 65歳
まだ見ぬ風景 心に描き
○…父・治予視(はるよし)が藤が岡で開いた画塾に始まり、第1回の展覧会から半世紀を数える「たぶろう美術協会」。「父が種をまき、花咲かせた会。自分の役割は、より大きく育つよう世話をすること」と語り、現在は全国に10支部、会員は約200人を数える。中堅の規模ながら若手の新規入会者も多く、画壇でも特に元気のある美術協会と評されているという。
○…会を受け継ぐにあたって、運営方針を大幅に変更。父のカリスマで結束していた時代が過ぎ、今後の隆盛には一人ひとりの高い意識が不可欠だと感じたからだ。皆で意見を出し合うことや、出展作品のクオリティ向上を重視し、展覧会は会員のやりがいや目標となるよう心掛けた。「目標は高く、留まることなく妥協なく。一歩ずつ着実に、皆で前進できていると思う」
○…大道小、藤ヶ岡中を卒業。武蔵野美術大学を経て市内中学校の美術教諭となった。「絵で食べていきたかったが、やはり難しかった」と苦笑い。しかし自分の仕事をデザインすることもひとつのアートだと考え、独自の指導で生徒に向き合った。「創作の楽しさを伝え、やりがいを引き出すことを常に意識した」と語り、「最初は美術の授業を息抜き扱いしていた生徒も、3年になると皆真剣に取り組んでいた」と顔をほころばせる。ある日息子の言った「父さんの授業、受けたかったな」との言葉が、自分の仕事に対する何よりの賞賛として胸に染み渡った。
○…その息子はガラス工芸作家となり、昨年には二人展も開催。「親として本当に感慨深く、幸せなこと。作家としてはライバルだけれど」と先達のプライドものぞかせる。自身も父の背中を見て志し、次世代へと想いを受け渡した「創作」について、「終わりのない階段を上るようなもの。会の節目はさしずめ、踊り場で軌跡を振り返り、行先を見通す機会」と評する。明日もまた、まだ見ぬ新たな景色を心に描く。
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