1月24日まで蔵まえギャラリーで個展を開いている組み木デザイナー 小黒 三郎さん 元市内中学校教諭 79歳
組み木に託す未来への願い
○…1枚の木の板をパズルのように糸ノコで切り分け、人形や動物、おもちゃなどに仕上げる組み木。縁の深い藤沢で初となる個展を1月15日から開いており、連日多くの人出で賑わっている。「藤沢での開催は懐かしい人にも出会えてうれしい限り。温もりのある組み木の良さをさらに広めるきっかけになれば」と目を細める。
○…東京都生まれ。小学3年生の時、空襲に遭い、鵠沼海岸の親戚を頼って藤沢へ。鵠洋小5年生の時に絵の上手な担任の先生から自分が描いた絵を褒められたことが美術を好きになったきっかけだという。鵠沼中、湘南高校でも制作活動に励み、絵描きを目指して進んだ多摩美術大学では油彩を専攻。卒業後は御所見中や藤ヶ岡中で美術教諭を務めた。
○…「受験勉強に左右されず、生徒とより密接に繋がれる教育に携わりたい」と30歳ごろに平塚盲学校へ移り、目の不自由な児童や生徒のために始めたのが組み木だった。視覚に頼らず子どもたちにどう教えたらよいかというプレッシャーの中、図面を書き起こして糸ノコと木に向かい合う日々。試行錯誤を繰り返しながら、組み木を通じて彼らが今後社会で生きていく中で必要な触察力を養った。そうした経験から組み木に未知の可能性を感じ、30年ほど前に組み木デザイナーとして独立した。「海外では木のおもちゃの作り手がたくさんいるが、日本にはとても少ない。もっと仲間が増えてくれると嬉しいですね」と物腰柔らかに語りかける。
○…手掛ける作品は木目が隠れず、木の感触を直接感じることができるようニスを塗らず、布の染料で淡いパステルカラーに仕上げたものが多い。「物に触れる経験は幼少期ではとても大切。森林が豊かな日本だからこそ、木の良さをわかって大人になってほしい」。優しい匠は作品に願いを込め、今日も命を静かに吹き込み続ける。
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