藤沢市謡曲協会会長として節目となる50回目の大会を開く 中谷 哲夫さん 78歳
楽しみながら後世に
○…節目となる50回目の発表会「藤沢市謡曲大会」の開催が目前に迫る。主催する「藤沢市謡曲協会」は半世紀以上の伝統を誇る、市内屈指の由緒ある文化団体だ。入会から10年、周りから幾度となく推されながらも固辞し続け、今年度から満を持しての会長登板となった。「正直なところ、大役を務める重責から早く無事に終わってほしいと思ってしまう。この大会後にはまた大きな舞台があり、しばらくは忙しいよ」と笑う。
○…謡曲とは端的に言えば、鼓や笛などの楽器や舞を交えた能楽を、声のみで演じるもの。物語の主役や脇役、登場人物の心の内や情景を伝える役などに分かれ、1つの作品を作り上げていく。「姿勢を正し、声を抑えながら籠らせ、腹から力を込めて出す」ことがコツとか。「良いチームワークで謡い上げられた時の爽快感、満足感はとても気持ちが良い」とにっこり。
○…埼玉県所沢市出身。大学卒業後、勤務先とのアクセスから鎌倉市内にマイホームを構えた。会社勤め時代、「プロの先生とはどんなものか」と興味本位で入会した社内サークルが謡曲との出合いだった。ほかにもゴルフや野球など多趣味だったが、退職後は「人に誇れる趣味といえば、多少自信があった謡曲だ」と、のめり込んだ。今では毎年夏休みに「電車で大冒険」と遊びに来る孫3人との大切なコミュニケーションツールとなっているそうだ。「分かりやすいよう本を作って謡わせているが、若いので吸収が早くて驚く。家族や親戚に誇らしく披露しているところを見ると嬉しい」。親子3世代仲良く旅行も楽しむなど、その幸せな様子が優しい口調と笑顔ににじみ出る。
○…「一時代をなしてきた伝統芸能には必ず意味がある。『若い世代にも残していかなくては』という使命感に駆られる」。目下の悩みは後継者育成。自ら楽しみながらその魅力を孫に教えるように、会員一丸となって伝え続けていく。
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