日本将棋連盟の支部会員が競う全国支部将棋県予選会(シニア名人戦)で初優勝した 岩下 正明さん 大鋸在住 65歳
受けの将棋、逆転の妙手
○…パチッ、パチッと絶え間なく響く駒の音が熱戦を物語る。腕自慢22人が棋力を競った県予選の決勝戦。自信があった訳ではなかったが、盤の向こうに座る相手を見て目の色が変わった。迎えたのは、高校時代から幾度となく対戦してきた「因縁のライバル」。「この人には絶対に負けたくない」。眼鏡の奥で、一気に闘志が燃え上がった。
○…大一番は相居飛車で開幕。自陣は受けからカウンターを狙う「右玉」、敵陣は攻撃を信条とする「腰掛銀」。序盤からの積極的な攻めに苦しい展開が続いたが何とかしのぎ切り、中盤へ。これまでの戦績は五分。棋力が拮抗していることもあり、互いに持ち時間を使い切った後は大混戦に突入した。曰く「足を止めて殴り合っているような展開」だったが、終盤の角打ちが”乱打戦”を制する逆転の妙手に。「さすがの強さだった」と宿敵を称えつつ「スリル満点でしたね」とにやり。4強止まりだった昨年の雪辱を果たした。
○…銀行員を辞め、49歳のとき銀座通りの一角に藤沢将棋センターを開業した異色の経歴。学生時代は寝食を忘れて没頭するほどの将棋好きで、「好きなことを仕事にしたい」と周囲の反対を押し切っての決断だった。オープンから早15年。現在客層は子どもから高齢者まで幅広く、常連客も多い。道場出身でプロを有望視される子もおり、「今はそれが夢ですね」と目を細める。
○…自らを駒に例えて「金」。「足元を固める守りの要ですし、自分もこんなどっしりした人間になりたいなと」。4月には県代表として全国大会に臨む。舞台は将棋の聖地、山形県天童市。「シニアでは初めての全国大会。気負いすぎず、平常心で自分の将棋を指したい」と意気込んだ。
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