11人目の藤沢マイスターに認定された 宮澤 忠彦さん 鵠沼在住 64歳
加工屋の矜持を胸に
○…優れた技能、技術を駆使し市民生活や産業発展を支えている技能・技術者を認定する藤沢マイスターに新たに認定された。科学技術国家資格における日本最高位の「技術士」を保有、40年以上機械加工職に従事――。と聞くと、頑固な職人を思わせるが、相手の心をほぐすような丁寧な口調と柔和な笑顔が印象的だ。「一度無くなった技術や技能は復活できない。産業革命以降受け継がれてきた経験知の伝導も私たちの役目」と、技術界の導き手として言葉をかみ締める。
○…藤沢育ち。戦闘機「飛燕(ひえん)」にも携わった設計技師の父の背中を見て、機械加工の道へ。いすゞ自動車入社後は設備課、技術課などを経て現在は社内全体で機械系のトラブルシューティング対応を行うパワートレイン工務部に所属。自身の肩書を「加工屋さん」と説き、「柔軟な思考、視点の転換が大切。『なぜ』を突き詰め、様々な可能性の中から答えを導き出すのは探偵にも似ていますね」とにっこり。
○…ふいに懐から取り出したのは、お手製の知恵の輪パズル。「ものづくりの奥深さを伝えるのに丁度いいんです」。その経験と人柄を買われ、県職業能力開発協会や技能五輪の検定委員を務めるほか、社内外の若手や地域の学生らに技術・教育指導も行う。指導する上で気をつけているのは、質問に対しどこまで答えるかの線引き。「答えを教えるのは簡単。でも技術者を育てるのであれば、考えて解決する力を養うため、あくまでヒントに留めたい」
○…いい職人になるには、との問いに自身の経験を踏まえ「経験を積むこと、いい師匠に出会うこと。いい師匠とは、相手のいい所を見抜いてくれる人」とほほ笑む。「マイスターとして、自身もそうありたい」
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