10月24日(日)まで「第30回手で触れて見る彫刻展」を開いている 桒山(くわやま) 賀行(がこう)さん 白旗在住 73歳
上手くなくていい
○…1993年から続けて30回。節目を迎え「こんなに続くとは」と感慨深い。きっかけは、妻が点字図書館でのボランティアを通じて知り合った視覚障害者との出会い。聞けば「美術館では囲いで仕切られ、作品鑑賞の機会がない」。それならばと自宅に招き、鳩が翼を広げる姿を彫った作品に触れてもらった。「こうやって羽を広げて飛ぶのか」。感動している姿に感銘を受け、すべての作品に手で触れられる個展を企画。作品名の札には点字を添えた。「皆が同じものを楽しめる大切さを感じた」
○…愛知県常滑市生まれ。幼い頃から陶彫家の父が粘土に向かっている背中を見て育ち、彫刻家・澤田政廣氏に師事。2007年には「演者」で日展内閣大臣賞を受賞するなど数々の作品を生み出し、湘南大庭市民センター入口の2体の少女像「春の詩」や、藤沢市役所の「我が家のソクラテス」なども手掛けた。個展やグループ展の参加は100回を超える。
○…指導者を務め、今回の彫刻展にも出品するアマチュアグループ「土曜会」は、各自が作りたいものを制作するのがモットー。仏像や孫の肖像などさまざまで、「上手くなろうと思わなくていい。その人一人ひとりの人生が表れるのが彫刻なんだから」と笑う。
○…アトリエに並ぶ木彫には、山々や家と一本道の情景や、佇む少年や少女の姿。彫った陰影で表情や感情の機微が伝わってくる、繊細な作品もある。触れられて壊されてしまう心配は、と聞くときっぱりと言う。「力が入って折れてしまっても構わない。培った技術で修復できる。多くの人に楽しんでもらえることの方が大切」。この30年で少しずつ実感する「共生」の世の中。「もっと進んでいってほしい」と願いを込めた。
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