二人三脚のシャッター 二宮の白崎夫妻が写真展
構図が決まった。ピントの位置を指示すると、視力0・04の夫に代わって妻がファインダーをのぞき、ピントを合わせる。二宮町の白崎裕彦(やすひこ)さんと広子さんの撮影スタイルだ。二人三脚で撮影を続けてきた夫妻が、「心にしみる風景」と題する写真展を生涯学習センターラディアンで11月19日(火)から24日(日)まで開く。
カメラは諦めない
ドライブにスキー、ゴルフ、書、墨絵。多彩な趣味を嗜んでいた裕彦さんが視力に異変を感じたのは、働き盛りの44歳の時だった。ゴルフのプレー中に「クラブの選択がおかしい」と指摘され、テレビを見ていると画面がぼーっと見えなくなった。1・5あった視力が急激に低下。病院を訪ねても検査の繰り返しで、なかなか治療が始まらない。焦りと不安が募った。原因不明の視神経萎縮であることが判り、「これ以上悪くなることはないが、回復は困難」と診断された。
多趣味の裕彦さんにとっては「好きなものが一つひとつもがれていくのが辛かった」。そんな中、諦めなかったのが高校時代に始めたカメラだった。「光を失ったわけではない」とフォトクラブに飛び込み、写真を学んだ。
撮影助手は広子さん
高性能の双眼鏡で撮りたい景色を探してシャッターを切る。しかし、花や風景を写すのにオートフォーカス撮影では物足りなさを感じ始めた裕彦さん。自分が表現したい写真を撮るには、マニュアルでピントを合わせる必要がある。
そこで助手に立ったのが、妻の広子さん。「花の雌しべに合わせて」「湖の水平線をもう少し上に」などと夫の指示を受けてファインダーをのぞき込み、ピントを合わせていく。撮影旅行ではドライバー兼助手を務め、裕彦さんの人生になくてはならない伴侶だ。
「なぜ神はこんな試練を与えたのかと、苦しくて泣いた時もあった」という広子さん。今は「二人で写真を撮って歩ける幸せに感謝」と笑顔で語る。
心眼で撮る
白崎さんは70歳の記念に横浜で個展を開催。地元での写真展は今回が初めてとなる。二宮の吾妻山で撮影した菜の花とメジロ、花、ライフテーマに掲げる富士山の写真など約40点を展示する。時間は午前10時から午後6時まで。初日は正午から。最終日午後3時まで。
裕彦さんは「視力に代わる心の眼でこれからも心にしみる写真を撮っていきたい」と意欲的だ。
|
|
|
|
|
|