大磯・二宮・中井町長新春インタビュー まちづくりへの思いを語る
2014年の幕開けにあたり、本紙では中崎久雄大磯町長と坂本孝也二宮町長、尾上信一中井町長の3氏にインタビューを行った。昨年を振り返ってもらうとともに、地域活性化や定住促進などの課題に対する取り組み、今年の展望、まちづくりへの思いを聞いた。
大磯 官民一体で町を盛り上げる
――昨年の取り組みについて聞かせてください。
町の組織体制として、副町長の就任や参事の登用、町部局を3部から4部に再編するなど町の運営に緻密さと確実性を持たせる見直しを図りました。2月18日に神奈川県から「新たな観光の核づくり事業」の認定を受け、黒岩祐治県知事などにも参加いただきキックオフイベントを11月に開催しました。国から補助を受けて先導的官民連携事業調査事業として大磯の別荘跡地や海、山などを総合的に、いかに大磯の観光のために資していけるかを調べています。その他にも旧吉田茂邸の再建、ごみ処理広域化など非常に多くのことに取り組んだ一年でした。
――卓話集会やおあしす24での取り組みは。
卓話集会では観光をテーマに町内24地区で延べ600人を超える方々と意見交換をしました。さらに、子育てをテーマに町内の保育園、小中学校PTA、子ども会の方々と直接お話をさせていただきました。おあしす24健康おおいぞでは、かながわ保健指導モデル事業を活用し、生活習慣病の重症化が心配される方に保健指導を行う「プレミアムおあしす」を6月からスタートしています。保健師の派遣を受け県と一緒に事業に取り組んでいます。
――観光の核づくり事業の今後の展開については。
官民連携調査事業や「大磯ブランド戦略に関するアンケート等の基礎調査」の結果を踏まえ、新たな観光の核づくり基本計画に基づいて進めていきます。民間活力と連携した事業展開を見極め、町や観光協会、商工会を含めたオール大磯で観光事業を推進します。一例として、大磯港の再整備や別荘跡地の利活用なども検討しています。これらは町だけで行っていくのではなく、商業や観光などに携わる全ての人々に認識を新たに持ってもらうとともに、組織をフル活用して大磯の産業・観光を盛り上げていく必要があります。
――観光客が食事する店やお土産を買う場所が少ないという声がありますが。
大磯には130年の歴史があり、風光明媚なこの地にある「精神的」なものがとても大きく、観光の要素の一つになっています。それをどうやって売っていくかというのは、とても難しい命題となっています。大磯町を訪れた人たちに町の持つこの魅力を楽しんでいただき、同時に何らかの形で大磯の経済を潤してくれる設備・施設・物販を作っていきたいと思います。日本の食文化も世界文化遺産になりました。地産地消で大磯特有の食事などを作って、提供できる場所を開発していきたいと考えます。
――新年の抱負を。
今年度は「健康」をテーマにしています。町民の方々にも心の健康と体の健康を感じていただけるように、教育、文化、福祉、医療、食文化など様々な町づくりを進めていきたいです。
二宮 四季の日帰り観光の町に
――昨年の出来事の振り返りをお願いします。
児童二人が波にさらわれた事故は町長になってからの7年間で非常に悲しく、衝撃を受けた出来事でした。警察・消防のほかに町民の方々やさまざまな関係を通じた町外・県外の方が捜索に協力してくれました。感謝しております。小さな町で多くの人が動いたことがとても印象に残りました。
――定住促進について。
町の人口が2万9千人を割りました。何とかしなければなりません。町内には宅地開発や賃貸物件などで約200世帯分の受け皿があります。しかし、環境と交通アクセスのよさだけで移住してきませんから、二宮町の魅力を打ち出す方策として子育て支援を掲げました。教育における英語力の向上も進めていますが、昨年、町民団体の仲立ちでブラジル・ベラノポリス市の小学校と二宮の小学生が手紙を交わし、交流が芽生えました。英語圏以外の地域ともワイドに交流を持つことで子どもたちの夢や可能性が広がると思います。
――日帰り観光も町の魅力の一つに据えています。
吾妻山公園の菜の花が咲き始めました。畑の土を入れ替えたので生育が良いようです。山頂から見える富士山が世界文化遺産に登録され、今までとはちょっと違う価値で眺められるかもしれません。菜の花を観光の「冬の陣」と呼んでおりまして、これから吾妻山の動物公園の跡地に芝桜などを植えて「春の陣」にしようと計画中です。砂浜がよみがえれば、中断している花火大会や地引網などのイベントを復活させて「夏の陣」に。「秋の陣」はラディアン裏に風致公園を整備し、通年で日帰り観光が楽しめる町にしようと構想しています。
――オリーブ栽培は。
30軒位の農家がオリーブを栽培しています。手摘みで収穫した実を絞ったオリーブオイルが昨年、二宮ブランド品に認定されました。近隣の小田原市や山北町などからも視察に来ています。二宮を中心に周辺地域一帯で栽培を手がけることで、湘南オリーブの一大産地を目指し、町の活性化につなげていきたいです。オリーブ園での収穫体験や、その場で絞ったオイルをお土産に持ち帰ることができたら楽しいと思います。また今年は給食センターの周りにオリーブの木を植えます。二宮産のオリーブが給食の食材になるでしょう。
――今年の抱負をどうぞ。
何事にも挑む。挑戦することです。交付金や補助金は減る。税収も減る。一方、福祉にかかるお金は増えていく。人口を2万9千人台に戻して維持したい。自立した二宮町でなければいけません。課題はたくさんありますが、お金がなくてもみんなでアイデアを出し、協力連携と支え合いによるまちづくりを目指します。だれもが参加する「オール二宮」の住民力・町民力を結集させて、課題に挑戦する一年にしたいです。
中井 定住化へ交通・子育て支援
――昨年を振り返った感想をお願いします。
全国で自然災害が多い年でした。山口県や島根県で記録的な大雨が降り、四万十市では気温41度に達しました。竜巻も発生し、伊豆大島の台風被害は記憶に新しいところです。台風26号の際には、町内3箇所の避難所に職員を朝まで待機させました。幸い、大きな災害もなく済みました。今後、地球の温暖化が進み、私たちの所でも今まで経験したことのないような豪雨や強風などに襲われることがあるかもしれません。中井町でも災害に対する心構えをしっかり持ち、町民の皆さんに防災について地域ぐるみで話し合ってほしいと思います。
――昨年1月に実証運行を始めたデマンドバスの利用状況はいかがですか。
お年寄りの買い物や通院、子どもたちの塾通いなどに利用されています。「今は自分で車を運転できるがいずれは利用したい」という理由で登録した人は多いです。鉄道の駅がない町で定住人口を維持するためにも住民の足の確保は必要です。デマンドバスが重宝だと喜んでいただけるよう、利用を呼びかけています。
――力を入れた取り組みについて聞かせてください。
定住化を進めるうえで若い世代が子どもを産み育てやすい環境づくりが重要であると、町長就任当時から子育て支援に力を注いできました。中学生までの医療費無料化や不育症治療費の助成などを実施していますが、少子化に歯止めをかけるのはなかなか難しいのが現状です。2園ある町立保育園のうち井ノ口保育園と井ノ口幼稚園で幼保一体化の基盤を築き、今年4月から認定こども園が開園します。中村保育園は子育て支援センターになります。高齢者の交流の場としても活用できればよいと思います。
――町のなかで何か新しい動きはありますか。
中井中央公園北側の里山風景が広がる区域で、商工会の人々が中心となって散策路や休憩処などを整備しています。町では、乳幼児から高齢者まで世代に応じた健康増進計画「美・緑なかい健康プラン」を展開していますが、せせらぎが流れるそばで森林浴をしながらのウォーキングは町外の方にも楽しんでもらえ、健康づくりに役立つでしょう。
――新年の抱負を。
昨年11月、井ノ口地区で一昨年から始めたあかりの祭典が盛大に催されました。小学校の行事だったランタンフェスタを自治会が引き継いだのです。このように住民が主体となった地域づくり、まちづくりを行政が共に手を携え、推進していきたいと考えています。大きな花火を打ち上げるような政策とは違い、地味かもしれませんが、町民の皆さんが明るく健康で快適に暮らせる協働のまちづくりに取り組んで参ります。
|
|
|
|
|
|