例年よりもやや葉が少ないモミジの枝に、いくつも吊り下がっているのはミノムシ。秦野市寺山の手打ちそば店「石庄庵」の敷地内の木で、今年の秋、ミノムシの一種「オオミノガ」が多数繁殖している。同地に開業して9年目で初めてだという。
同店の周辺は、県の「里地里山保全等地域」に選定されるなど豊かな自然が広がる地区だ。店舗敷地内にも数種類の桜やアジサイなどが植えられ、四季折々の風景が来店者の目を楽しませている。
石井貞男社長(62)が異変に気付いたのは9月上旬。例年、黄色に色づいてくるはずの樹齢約15年のソメイヨシノの葉が、今年はすっかり落ちてしまったように見えた。「木が病気になったのか」と心配しつつ、枝先に目を凝らすと枯葉の塊が無数についていたという。
ある常連客から、枯葉の塊はオオミノガが作ったみので、葉はミノムシが食べてしまっていること、またオオミノガは数年前に寄生虫によって個体数が激減したことなどを聞いた。石井社長は駆除をせず見守ることを決めた。
現在、店の周りでは、みのから上半身を出してちょこちょこと枝の上を移動する姿も見られ、都心からの来店者や子どもたちが珍しがって眺めているという。質問も多く寄せられることから、石井社長が手作りした「ミノムシの一生」の解説を店先に掲示している。
「ちょっとだけ残念なのはあれかな」。ほほ笑む目線の先には、高さ3mほどのイロハモミジ。毎年10月初旬には真っ赤に色づくはずの葉はまばらで、枝に20個ほどのミノムシが秋空を背景に連なっている。「これも、この地域の自然が豊かな証拠。無事に冬を越えてもらいたい」と話した。
オオミノガは国内最大のミノガ。1995年頃に国内に侵入したオオミノガヤドリバエにより個体数が大幅に減少した。
昆虫の生態に詳しい自然観察施設「くずはの家」の高橋孝洋所長によると、秦野市内のオオミノガも寄生虫の影響で「絶滅してしまうのでは」と懸念するほど激減した時期があったという。ここ数年は個体数が回復しつつあり、同施設の敷地内でも見られるようになっているという。
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