精神障害のある人やその家族が中心となり、地域で安心して暮らすため、障害について理解を深めてもらおうと始まった「旭区保健福祉セミナー」が3月9日(土)、旭公会堂で開催される。今年で25回目を迎えるセミナーは、地域で支え合い、安心して自分らしく暮らせるまちづくりを目指す旭区ならではの取り組みの一つ。2019年以来5年ぶりの”リアル”開催を前に、これまでの経緯と開催に関わる当事者に話を聞いた。
葛藤する思い
セミナーは「個性ある区づくり推進事業」の一つとして開催される。
セミナー開催のきっかけは、障害を持つ当事者を含むネットワークが生まれる中、障害を「理解して欲しい、知って欲しい」と思う一方で、「知られたくない、知られると困る」という当事者らの葛藤からだった。
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旭区には1950年代から、精神科病院が相次いで建設されており、現在、有床病院が市内で最も多い6カ所ある。障害を持つ当事者やその家族は、毎日の生活を通し、病院や地域作業所を通じてネットワークを作ってきた。ネットワークは日常的につながるフリースペースやさまざまな要望を解決する場所を拡げることにつながった。
セミナーの開催は、ネットワークが拡がる中で、当事者やその家族、そして地域の住民がお互いを理解し、それぞれが安心して暮らせるようにとの思いから、発案された。2000年に第1回を開催。当初は、交流のある埼玉県の先駆的団体の協力を得て発表を行っていたが、途中から旭区の当事者らが中心となり、実行委員会形式で開催。実行委員会には、障害を持つ当事者が参加し、内容を決めていった。
「諦めないで」
今年のセミナーは、「知って欲しい心の病〜未来へ向ける想い〜」をテーマに、旭公会堂で開催される。2020年の第21回は新型コロナの影響で中止となり、翌21年はオンラインで、22、23年はYouTubeによる配信で開催しており、5年ぶりにリアルでの開催となる。時間は午後1時から4時。
都岡町の就労継続支援B型「ウイングス」に通う広瀬美希さんは、実行委員会の一人としてセミナーに関わる。広瀬さんは当初、障害について「諦めた気持ちが膨れていたので、身近な人にわかってもらおうと思わなかった」という。しかし、心の声を一つにし、テーマにしていく実行委員会の活動を目の当たりにし、「精神障がい者だからこそ伝えられることがあると考える前向きな姿勢に心を打たれ」、自らも実行委員会に参加するようになった。
今回のセミナーチラシには、広瀬さんが込めたメッセージが添えられている。広瀬さんは「私たちの障がいは目に見えないからこそ、誤解を招きやすく、場所によっては悪い印象を持たれてしまうかもしれない。その誤解や勝手なイメージがその人とはつながらないことを知ってほしい」との思いを込めたという。
広瀬さん自身も障害者手帳を受け取った時、希望を失い、負の感情を抱いたことを吐露。自身も「障がい者に差別をしていたのかもしれない」と打ち明けた。
しかし自ら実行委員会に参加する中で、「メンバーの皆は、どんなに苦しくても希望を持っている。希望とは心に潜む優しいひかり。そして障がいがあってもなくても手を差し伸べてくれる人のあたたかさ。この2つが重なることが、理解する気持ちの始まり。理解してくれる周りの人の存在に気付かなくなってしまうので、『病気だから』と私のように諦めないでほしい」と呼びかけた。
松本ハウスが登壇
セミナーは2部構成で、1部は当事者の体験発表会。2部では、松本キックさんとハウス加賀谷さんによるお笑いコンビ「松本ハウス」によるトークショーが行われる。
「松本ハウス」はテレビ番組で人気が出た後、ハウス加賀谷さんが統合失調症を悪化させ、1999年に活動を休止。加賀谷さんが入院生活を経て病状を改善させ、2009年に復帰した。現在は、2人で芸能活動を再開するとともに、自らの体験を語る講演活動も行っている。
聴講希望者は2月13日(火)から29日(木)まで、左記2次元コードで申込み。定員は先着250人。
当日は講演の他、会場内で区内各事業所の製品即売会も開催される。こちらの参加は自由。
セミナーに関する問合せは区高齢・障害支援課【電話】045・954・6145または生活支援センターほっとぽっと【電話】045・744・8244。
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