あの悔しさから約2カ月半。三菱重工相模原ダイナボアーズは新シーズンに向け、海外でも経験豊富なグレック・クーパー氏(53)を新たにヘッドコーチに迎えた。10年ぶりのトップリーグ(TL)昇格を目前で逃した失意のシーズンから、クラブをどう指揮し、どう導くのか。めざすスタイルやその哲学について新指揮官の思いに迫った。
昨季はここ数年で最も昇格に近づいた年だったが、5年連続で敗れている「鬼門」でまたも昇格の夢が断たれた。
チームスタイルの刷新を―。佐藤喬輔前監督の退任後、白羽の矢が立ったのが、ニュージーランド出身のクーパー氏。同氏は国際リーグ戦・スーパーラグビー所属のハイランダーズや、TL常連のNECグリーンロケッツを率いていた過去を持つなど経験豊富。TLの下部リーグ・トップチャレンジリーグ所属の三菱重工を選んだ理由について同氏は「三菱重工は昇格への挑戦を毎年続けている。自分にとっても良いチャレンジだった」と話す。クラブに合流後、最初に感じたのは選手たちの意識の高さ。「『TLに昇格、復帰したい』という思いを強く感じた。前監督が良い基礎を作ってくれていたのでレベルはとても高かった」
現在は、自身がめざす攻守両面でのアグレッシブなスタイルを浸透させるべく、選手たちに日々ハードな練習を課している。とりわけ「攻めるディフェンス」と「フィジカル面の強化」に注力しており、選手たちの戦術理解も着実に深まっている。クーパー氏は「私の哲学は『個人でなくチーム全体』。個々に素晴らしい選手はいるが、互いに理解し合うことが重要」と力を込める。
「自信与えたい」
クラブが悲願のTL昇格を果たす上で必要なことは―。クーパー氏が挙げるのは二点。一つは「シーズンまでの時間を上手く使うこと」。そしてもう一つは「ビリーブ=信じること」。三菱重工は過去6年連続、最終入替戦で惜しくも涙を呑んできた。「勝負弱い」と揶揄する声も一部あるが、裏を返せば、TLのクラブと互角に渡り合える地力がついた結果とも言える。「必ず昇格できると信じること。そうすれば迷いもなくなる。自信を与えてあげたい」。そう話す指揮官は、今秋開幕予定のトップチャレンジリーグへ向け「昇格を果たす」と自信をみなぎらせる。そして、常にサポートを続けるファンへの感謝の気持ちも忘れない。「ファンの方の声援が力になる。私たちは本気で昇格をめざしているのでそれを信じてほしい」。指揮官と選手たちの信念。それが一つになった時、「昇格」の二文字は現実のものとなる。
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