新型コロナウイルス感染症拡大による外食需要低迷や温暖化による収穫量の増加など、三浦半島地域の農家では「供給過多」に頭を悩ませている。行き場がなく廃棄せざるを得ない状況に対し、飲食事業者らが商品化で支援する動きが始まっている。
三浦半島の冬の特産物と言えば大根。12月・1月は収穫の最盛期だが、飲食店の営業自粛や時間短縮により、「出荷する場所がない」という状況に陥っている。これに連動する形で冬野菜の価格が軒並み下落。廃棄野菜などを肥料に変える三浦バイオマスセンター(三浦市)には前年度比で約2倍の”廃棄大根”が農家から持ち込まれているという。
「ホテルの味」に商品化
「愛情を注いで育てた大根を自らの手で廃棄しなければならない現状に、農家は心を痛めている。少しでも助けになれば」―とその苦境に手を差し伸べたのが、横浜ベイシュラトンホテル&タワーズ(横浜市西区)。長坂の農家、広瀬農園や三浦市の三留農園・石井農園の大根をポタージュに商品化し、先月下旬から真空包装で販売を始めている。
廃棄する予定だった新鮮な大根を直接購入し、同ホテルの洋食総料理長の磯貝徹さんが考案したレシピでポタージュスープを製造。もともと同ホテルでは、10年以上前から食品リサイクルの事業を展開する株式会社ヤサイクル(須軽谷)の協力でレストランの食品残さをたい肥化し、その肥料で育てた野菜を再び食材として使う取り組みを進めており、広瀬農園らもこの活動に協力している。こうした縁もあり、このほど青首大根を提供することになった。
一般販売のほか、医療従事者の支援として、風呂吹き大根(非売品)と合わせて計700食が横浜市内の病院などに無料提供される。「商品という形になって、廃棄数を減らせるのは助かる。せっかく作った大根なので多くの人においしく食べてほしい」と同園の広瀬重治さん。磯貝総料理長も「腹持ちの良いお米をつなぎに、生姜を入れてほっこり温まってもらえるスープにした。三浦の大根は瑞々しくて甘い。地元野菜のおいしさや食品ロスの問題も伝えられたら」と連携に期待を膨らませる。
商品は「大根ポタージュde元気」と名付けられ、ホテルのレストランや公式オンラインショップ(【URL】https://onlineybsh.thebase.in/)で1パック2食分540円(税込)で販売中。売れ行きも好調で、同ホテルでは、今後も農家と協力し、三浦の野菜を使った商品開発を進めていく考えだという。
いちご狩りも減少
年明けから始まっている津久井浜観光農園の「いちご狩り」も、外出自粛を受けて来園者が減少している。今年は出足も鈍く例年の4割程度。こうした状況に農園内の各園も窮状を発信し、市内のホテルやスーパーがすぐに販売やメニュー化に手を挙げてくれたという。いちご狩り組合長の小林務さんは「地元の事業者の協力や声かけのおかげで、客足も少しずつ戻っているように思う。支援の輪が広がっているのは嬉しい」と話している。
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