大手電機メーカーの東芝が今月12日、土を使わず光や水を用いて野菜を栽培する「東芝クリーンルームファーム横須賀」(船越町1の201の1)を報道関係者向けに公開した。環境に左右されず安定生産が見込めるため、世界的にも注目されている。収穫した野菜は、11月下旬をめどに都内のスーパーなどに出荷され、一部はよこすかポートマーケット(新港町)でも販売される予定だ。
ほぼ無菌・無農薬
ファーム横須賀は、東芝の照明器具事業を手掛ける「東芝ライテック」内、東芝所有の建屋にある。かつて東芝がフロッピーディスクを生産していたが、時代の移り変わりに伴い事業を縮小。使用していたクリーンルームの有効活用を目的に植物工場に転用した。工場の延床面積は1969平方メートル。生産規模はレタスに換算して300万株/年。年間3億円の売り上げを見込む。
植物の成長のため光の波長を最適化した蛍光灯や、均一な温度・湿度を提供する空調機器、半導体事業で培った生産管理システムなど、東芝の幅広いノウハウを導入している。海が近い土地柄も考慮し、空気中に含まれる塩分を徹底的に取り除く空調システムも完備。殺菌や消毒に効果的な水処理技術などを採用することで、ほぼ無菌状態を実現した。同社によると、付着している雑菌の数が、土耕野菜と比べて1000分の1ほどの環境だという。そのため、雑菌による傷みが少なく、長期保存可能な無農薬野菜ができる。
品目はレタス、ミズナ、ほうれん草、ハーブなどの葉物類。価格は販売店舗によるが、気候に左右されないため安定生産・安定供給が可能だ。
収穫した野菜は、今月下旬をめどに都内のスーパーなどのほか、よこすかポートマーケットにも出荷される。今後の市内展開については「現在話を進めている店舗もある」と担当者。ポートマーケットでは入荷次第、店内にコーナーを設けるなどして定着を図る。販売担当者は「市内唯一の販売店なので、他のスーパーマーケットとの差別化になるのでは」と話した。
地元からラブコール
東芝のある船越では「地元飲食店への出荷も検討してほしい」といった声が早くも上がっている。街の特色を活かしたグルメイベントなどを実施していることから、「話題性があるので、イベントやまちおこしに活用できないか」といった期待も膨らむ。東芝の広報担当者は「地元住民を招いた見学会や地元飲食店への出荷に関しては検討中」と話している。
現在、ファーム横須賀の稼働率は約25%。雇用については「運用は機械で管理しているため、大人数の雇用は今のところ見込んでいない」とした。
横須賀発、世界へ
東芝では今後、ファーム横須賀の栽培システムを”まるごと”販売していく意向だ。「アジア各国を始め世界的な展開も目指す」としている。
近年、植物工場事業に参入する大手企業が増加しており、外食チェーンの(株)コロワイドも佐原にあるキッチンセンターで市場などへの流通はしていないが、水耕野菜の栽培を行っている。
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