源流から海までの生態系が手つかずのまま残されている「小網代の森」。昨年7月に一般開放が始まってから1年間が経過した。首都圏で唯一とも言われる貴重な自然を楽しもうと訪れた観光客は10万人を超え、散策や環境学習の場として好評を得ている一方、来訪者や地元関係者からは飲食店やトイレの増設、案内板、三崎下町への交通利便性など改善の声が上がっている。
小網代の森は総面積70ha(東京ドームおよそ15個分)を擁する自然豊かな緑地帯。かつては周辺一帯で大規模な開発計画も持ち上がっていたが、市民や環境保護団体などの保全活動によってその価値が見直され、神奈川県が土地を取得。その後、散策路をはじめとする同地の整備が行われ、昨年7月から一般開放されている。
森林浴を楽しみながらのハイキングのみならず、湿地や干潟、森、海、川に生息する2千種以上とも言われる動植物の宝庫としても有名。環境教育の場にも活用されており、市担当課によるとこの1年で「10万人を超える人が訪れている」という。
しかし、多くの人で賑わいを見せる一方で、「急増している観光客への対応が間に合っていない」と利便性の向上を求める声があがっている。
これまで県は一般開放直後から順次案内表示板を設置しているほか、先月末には三浦市観光協会が、小網代の森の最寄り駅である京急三崎口駅前に観光案内所を新設。懸案事項だった観光客対応に本腰を入れるなど、徐々に整備が進んでいる。しかし、トイレは宮ノ前峠入口側に設置されている簡易トイレ2基のみと少なく、周辺の飲食店や民家に借りにくるケースも頻発。「見知らぬ人を家に上げたくないが、事情が事情なだけに無下に断ることもできない」と困惑する近隣住民もいる。
地元小網代選出の市議会議員は、「不便な点を見直し、『来てよかった、また来たい』と思ってもらえるおもてなしをしなければならない。改善に向けた提案を今後も行っていきたい」と述べた。
回遊で活性化期待
平日休日を問わず市外、県外からの来訪者で賑わう小網代の森。交流人口の拡大や地域経済の活性化をめざす三浦市も、街の新たな顔となりつつある今、観光資源としての集客力に期待を寄せている。
現在検討が進められているのは、森で散策を楽しんだあとのハイカーたちの動き。周辺の油壷や三崎下町・城ヶ島地区を食事や観光で回遊させる仕組みを確立させ、いかに地元経済と結びつけるかが今後の肝となってくる。
回遊を促すには路線バスの利便性向上は不可欠。運行路線や乗り換え、便数など県や市をはじめとした小網代の森の関係機関で構成される「小網代の森保全利活用対策協議会」で、議論が深められている。
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