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三浦版 公開:2016年5月5日 エリアトップへ

黒岩知事インタビュー 未病の改善で健康長寿へ 神奈川から国内外に発信

社会

公開:2016年5月5日

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インタビューに応じる黒岩知事
インタビューに応じる黒岩知事

 東洋医学の概念で、病気になる一歩手前の状態をさす「未病」。神奈川県では健康で長生きできる社会の実現をめざし、未病を改善するための取り組みを推進している。事業領域は年々拡大を見せ、高齢化が顕著な三浦半島の各市町でも独自策を打ち出すなど注力する。取り組みを先導する黒岩祐治神奈川県知事に、進捗状況や今後の展開を聞いた。

 ――これまでの取り組みを振り返ってどのような手応えをお持ちですか。

 「昨年度実施した県民ニーズ調査で、『健康寿命日本一をめざす上で、未病を改善する取り組みを重要だと思いますか?』という質問に対し、約85%の人が『重要』と回答しました。ここまで意識が高まったということは、非常に大きな成果です。もともと未病という言葉を掲げようとした時に、多くの方から『よく分からない言葉だ』と反対されました。しかし、今では普及啓発協力活動を行う企業と団体の登録数は約7000。未病サポーター研修受講者は昨年度3000人に達し、今年度も既に2000人の講座予約があるなど着実に広がりを見せています。超高齢社会を乗り越えるモデルを作るためには、病気ではなく未病を改善することが大事だと考えています」

 ――普及啓発活動の今後のビジョンをお聞かせください。

 「国に対して働きかけを行ったことで、2014年に閣議決定された政府の健康・医療戦略に、健康未病産業の創出という言葉が入りました。今は神奈川県としての取り組みという位置づけですが、日本の国家戦略に持っていくことが次のステップです。もう1つは海外戦略。英語にはない未病の概念を”ME-BYO”と表記、国際商標登録したことでWHO(世界保健機関)やハーバード大学などが興味を示してくれ、動き始めています。また、昨年10月には、医療・健康産業関係者等が参加した「未病サミット神奈川2015in箱根」を開催しました。今後、2年に1度行いながら、国内外へのアプローチで未病コンセプトを神奈川県から発信していきたいと思っています」

未病産業に成長の活路

  ――今年度実施する県の未病関連事業の特徴的な取り組みを教えてください。

 「当初は中高年層を対象にした超高齢社会を乗り越えるモデルを作ろうと進めてきましたが、その中で気づいたのは子どもたちのこと。未病を改善するために大事なのは、食・運動・社会参加の3つです。朝食を食べなかったり、激しい偏食など食生活の乱れが目立っているほか、県内小学生の基礎的運動能力は全国平均と比べ低い。パソコン・携帯電話での1人遊びが増えていることで、コミュニケーションが取りづらくなっていることも未病を改善する上で大きな問題です。子どもの未病対策推進で、栄養教育や地産地消の学校給食を進める食育事業、体力・運動能力向上と運動習慣を定着させる取り組みを始めています。他にも、”未病女子対策”と名付けた若い女性の健康意識の醸成や、高齢者の認知症のリスク軽減も重要です」

 ――未病産業の創出にも力を入れています。三浦半島では大草薬品(横須賀市)や湘南信金、三浦市社会福祉協議会が未病産業研究会に登録、販促活動や健康増進の啓発に努めています。

 「これまでの健康・医療産業の垣根が取り払われたことで、色々な企業が未病産業に『我こそは』と参入しており、勉強会やサービス・商品開発の実証実験などを行う『未病産業研究会』には約350団体(4月末時点)が参加。日に日に増えています。最先端テクノロジーだけではなく、未病をコンセプトに付加価値をつけた温泉やレストランなど、従来の産業も新たなビジネスになりますし、楽しみながら未病を改善する観光モデルも提示できます。全く新しいビジネスがここから始まろうとしているのです」

県立保健福祉大を拠点に

 ――人口減少や高齢化が進む三浦半島の未病対策についてはいかがでしょう。

 「4市1町の首長が集まって開かれている三浦半島サミットで、昨年11月に未病を改善する半島として宣言を行いました。地域をどう活性化していくかという中で出てきたアイデアは、非常に嬉しく、期待しています。まさに三浦半島が持つ魅力は、豊かな緑と海。食も豊富で温暖。暮らしやすさは、未病を改善するための基礎的な条件でもあります。特化させていこうとする動きは素晴らしいです。そして、先般の『自転車半島宣言』。自転車での周遊観光の仕掛けは、運動と密接に繋がり未病コンセプトと合います。新たな魅力と従来からある資源を繋ぎ合わせていけば、三浦半島の良さを改めて再発見できるのではないでしょうか」

 ――県と市町とのさらなる連携が必要になります。

 「県立保健福祉大学(横須賀市平成町)が拠点となり、一体で様々な取り組みを行います。地元に対する貢献を非常に意識しており、健康チェックや栄養指導などの学術的な裏付けとあわせた連携が期待できるでしょう。また、三浦市では同大学と市内介護保険事業所、市社協、地元企業などが連携した『リビングラボラトリー事業』を展開しています。現在は、買い物支援システムや食生活支援サービスの構築、介護リハビリロボットの研究開発が進んでいると聞いています」

 ――横須賀市にある県営浦賀かもめ団地では、健康寿命の延伸と団地再生をめざした先進的な取り組みが進んでいます。

 「県営団地では65歳以上の1人世帯の入居者が増えています。しかし、発想を転換すると、そこに高齢者がたくさん住んでいるならば、団地内を回るだけで訪問医療・介護ができますよね。余剰地や空き住戸にクリニックや介護事業所などの保健・医療・福祉サービス拠点と高齢者が集まる場所を整備することで、高齢化した団地を健康で安心して住み続けられる”健康団地”へ再生することが可能です。出来上がったコミュニティー内で『食事を作ってみよう、介護予防のダンスや体操をやってみよう』などの思いがあがってくる。これは未病を改善するための要素の1つ、社会参加です。団地そのものが未病を改善する中心的な場へ。そのような形で団地の再生も果たしていきたいです」

 ――ご自身ではどんな未病対策をされていますか。

 「ラジオ体操から始まって毎朝5Km、みなとみらいの辺りを走っています。とても気持ちがいいですよ。そしてストレッチ、腹筋、背筋、腕立て伏せ。食事もバランスよく必ず3食食べます。好き嫌いなく何でも。だから体は極めて健康です。そうは言っても、なかなか体重は減りませんけどね」

 ――最後に読者へメッセージをお願いします。

 「三浦半島はまだまだ魅力が眠っています。人がいなくなる、取り残されていくのではなく、これだけ豊かな自然や潜在能力があるのだから、うまくまとめ上げれば皆が来たくなる場所になります。都心からそれほど遠くなく楽しめる。”ちょこっと田舎だけどおしゃれな三浦半島ライフ”を、もっと特化すれば今までの流れは逆転します。ポテンシャルを感じていただき、超高齢社会という大きな課題を前向きに乗り越えるパワーにしていきましょう」

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