漁獲量が減少する冬場の安定した水揚げの確保と漁業者の収入源の創出をめざし、市内金田湾の漁師がカキの養殖に取り組んでいる。現在は湾内で採取した天然の種ガキから試験養殖を行っており、生育は順調。将来的には量産化して新たな三浦ブランドとして広めていきたい考えで、カキをはじめとする貝類の多品種生産も視野に入れている。
漁港内でカキの試験養殖を行っているのは、金田湾の定置網漁師・飯嶋武さん=人物風土記で紹介。「この時期に獲れるのは大半がスズキとヒラメで、その漁獲量は年々減少している」。取り組みの背景には、12月〜2月頃まで続く漁閑期の不安定な水揚げにある。飯嶋さんは毎週日曜に開かれている金田湾の朝市出店や飲食店への卸販売をしているが、目新しさに乏しい冬場の品揃えが気がかりだった。「せっかく毎週朝早く来ても並ぶのはスズキとヒラメばかり。それでは飽きてしまう」と危惧。漁閑期の下支えとなる新たな商品として、短期間ながらかつて試験養殖が行われていたカキに着目した。昨年10月には、みうら漁業協同組合が養殖に関する許可を県から取得。本格的に動き出した。
金田湾は栄養や水質、潮の流れなどカキの生育に適した環境。城ヶ島にある県水産技術センターやカキ養殖の先行事例を持つ横須賀市東部漁協の関係者らに技術指導を仰ぎながら、定置網漁やワカメ漁の傍ら飼育を続けている。殻につく海草やゴミを1個ずつ手作業で除去したり、飼育水槽の管理と手間暇はかかるが成長は順調。取り組みの話しを聞きつけた市外の飲食店経営者が、早くも視察に訪れるなど関心が高く、今後生産ラインに乗って安定した品質と供給数が確保できれば「(事業として)成り立つのでは」と話す。
飯嶋さんは将来的に、ムラサキガイなど他の貝の養殖にも意欲を見せており、「漁業の新たな可能性に若者が興味を持ってもらえたら」と期待を込める。
他自治体でも着手
横須賀市東部漁協では、2009年から市の支援を得て本格的な試験養殖がスタート。年々収穫量を増やし、現在では横須賀市内の飲食店でのメニュー提供や漁協朝市などで販売するなど、新たな横須賀ブランドとして定着しつつある。
また、真鶴町でも昨年から町と地元漁協が連携して養殖事業を始め、島根県から取り寄せた稚貝を真鶴湾の沖合に投入。成長の様子を見守っている。
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