2012年の幕開けにあたり、本紙では落合克宏市長に年頭のインタビューを行った。落合市長は、昨年平塚市や国内で起きた出来事を振り返るとともに、新年度予算編成の見通しをはじめ、防災や経済など、今年取り組むべき重点政策について語った。(聞き手/本紙・平塚編集室 沼田繁)
――昨年、国内外で印象に残った出来事は何ですか。
「昨年は3月11日を抜きに語れぬ一年でした。平塚市は宮城県石巻市と災害時相互応援協定を結んでいましたので、物資やマンパワーを送ってきました。職員の派遣は今も続いておりまして、延べ約140人を送っています。市民の支援活動も広がり、地元のロータリー・ライオンズクラブなどの団体や企業から合わせて7500万円ほどの義援金が寄せられ、お届けすることができました。復興支援は長い目で続けなければなりませんし、無理のない中で応援していかなければいけません。秋の台風でも相当な風の被害を受けましたので、そうした自然災害の恐ろしさと教訓をあらためて与えられた年でした」
日産跡地「まちづくりの重要な要素」
市制80年 美術館で棟方志功展も
――昨年、大阪市長選で橋下徹氏が高い支持を集めましたが、ああいう首長像はどう評価されますか。
「ご自分の考えに合わない職 員の処遇について発言をされていました。そういう部分で私とはやり方が違います。私は平塚市職員として組織の中にいた経験から、市民のために職員がその気 になって結果を出してもらう組織運営が理想だと思います。ただ、市民の目線は厳しいとは伝えていかなければいけません」
――震災のなかでも明るい話題もありました。
「なでしこジャパンの活躍は勇気を与えてくれました。ただサッカーの話題では、湘南ベルマーレは残念でしたね。ベルマーレには地元の誇る資源として、平塚 を売り出してもらえる強さを持って欲しいです。もっともっと地域に溶け込んでくれれば、市で出来る協力も広がっていくと思います。今年は何とか昇格しても らいたいです」
――昨年の平塚で印象に残ったことは何ですか。
「七夕まつりを開催できました。戦災復興から始まったお祭でしたし、復興という名のもとに出来たというのは、昨年の明るい話題でした。三つの大型事業(新市庁舎・環境事業センター・市民病院)が、目に見えて動き始めた年でもありました」
――来年度の予算編成の見通しはいかがですか。
「個人市民税は若干上がりそうですが、法人市民税が大幅に減り、固定資産税も土地家屋の評価替えにより、税収はトータル20億円くらいの減となる見通しで、相当厳しいという感覚です」
――投資的経費の確保や将来負担のバランスが求められます。
「将来負担比率は県内19市で1番か2番目に低いのですが、合計の事業費が300億円を超える三大事業を進めています。駅のバリアフリー化、ツインシティ など、将来の負担を増やしたくはありませんが、着実に進めなければならないものもあります。2月には中・長期の財政推計を示します」
――税収を増やす工夫はどうされていきますか。
「若い世代や労働者人口を増やしたい考えもありまして、今年4月受診から小児医療費の支給対象を3年引き上げます。最高26万1千人だった人口は、現在 26万人です。持続可能な発展には人口を維持し、選んで住んでもらうことが必要です。約1・3億円の歳出増を見込みますが、必要な投資と考えています」
――財源確保のため、大藏前市長が始めた仕事の点検作業(事業仕分け)は継続していくのでしょうか。
「時代に即した事業なのかという外部の客観的評価をいただき、それを参考に選択と集中をかけたいと考えている最中です。対象事業の選定段階から、客観的にできる仕組みが作れれば一番いいと思っています。来年度は予算化して取り組みたいと思っています」
――人件費削減についてはどうお考えですか。
「昨年、市長給与を50%削減して防災関連費に充てることを決めました。自ら身を切ることが必要との考えもありましたから。ただ、人件費カットは一方的押 し付けでは出来ません。市民の厳しい目はもちろん、人事院勧告や組合との協議を含めて相対的に勘案しないといけない問題です」
――防災対策の進捗状況はいかがですか。
「海岸線地域の避難場所確保のため、津波避難ビルの協定を進めています。現在19ヵ所を指定させていただいています。なかなか進まないというご批判もあり ますが、マンションの場合だと管理組合の承諾が必要という手続きもあって、急に増やすことは難しい。職員も現場で一生懸命やっていますし、意識の高いこの 機に迅速に進めるように伝えています」
――県の津波浸水予測図の素案が発表されました。
「平塚での 津波想定の最大津波高は元禄型関東地震と神縄・国府津―松田断層帯の連動で約7・6m、8mある国道134号線を超えないとのことでした。ただ、河川を遡 上して低い所に流れる想定もされています。相模川右岸は八十一%堤防が整備されていますが、飛び地の須賀新田のある左岸側は自然堤防のままで、国や県へ要 望しているところです。金目川ではなでしこ地区の一部に低い土地がありますので、一時避難場所を早く確保したいと考えています」
――平塚市版のハザードマップはどういったものになりそうですか。
「県の津波浸水予測図の今年度中の完成を待って作成します。A1版で表面に地盤の揺れやすさなどを表示し、裏面は津波でどれくらい浸水するのかを示すものとし、各戸に配りたいと考えています」
――今年の抱負についてお聞かせください。
「子育て支援や風水害対策はもちろん、地域経済の活性化も考えていきます。日産車体が2月で第一地区の生産を終了するという話になりましたが、大きい企業 に出て行かれないインセンティブも考えていかないと。中小企業向け融資や起業支援も必要です。厳しい時代ですが、発展の土台となる年にしたいです。昨年は 国民が大変な思いをしました。復興の意味も込め、発展していこうという年にしていきたいです」
――日産車体第一地区の今後の跡地利用について、どう関わるおつもりですか。
「用途地域の許認可もありますので、日産車体と一緒に考える体制はとっていきます。平塚を活性するための利用を考えて欲しいと伝えていますし、企業側にもそう思ってもらっています。広くて中心街に近い土地なので、まちづくりの重要な要素として捉えています」
――ツインシティはどう進めていきますか。
「圏央道や第2東名の開通が間近で、平塚は流通の重要拠点になります。寒川町と連携して進めるものですが、環境アセスメントなどは先行してやっていきた い。区画整理組合の設立認可と平行し、24年度中には都市計画決定を目指していきたい。平塚北部の核として、駅の誘致も含めて波及効果もあると思う。商業 施設の引き合いもあると聞いています」
――今年は市制80周年を迎えます。
「大きな式典は控えます が、平塚の魅力を発信する良い機会です。美術館では記念事業として4月に棟方(むなかた)志功(しこう)展、7月に美人画の上(うえ)村松園(むらしょう えん)と鏑木清方(かぶらき きよかた)の作品展を予定しています。文化や芸術、音楽などを通じ、文化度の高い、暮らしやすいまちづくりを進めていきたいと思います」
今年の取り組みについて語る落合市長
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