陶磁専門の公募展として国内最大規模の「第49回全陶展」(主催・全陶展)で、豊田小嶺在住の陶芸家・馬場芳道さん(74)の作品が全陶展大賞を受賞した。同展は10月16日〜22日に上野の東京都美術館で開催された。過去の受賞歴も含め、今回で同展の「三大賞」すべてを手にした馬場さんは「体が動く限り創作を続けたい」と意欲を見せている。
全陶展大賞は「文部科学大臣賞」「東京都知事賞」とともに、同展の三大賞の一つ。馬場さんは2010年に都知事賞、16年に文科大臣賞にそれぞれ輝いており、今回で三冠を達成した。
今年は全国の陶芸家から378点の応募があり、うち314点が入選。馬場さんは今回、高さ約40cm、幅約60cm、奥行き約30cmの鉢『炭化化粧紋楕円鉢』を出品した。
これまでは器ではなく、独創的なオブジェで文科大臣賞などを受賞してきた。「今回は賞を意識せず、自然体で創ろうと思った。鉢や壺は日ごろから創っていて、今回の作品も普段の手法で創作。だから大賞に選ばれたとき、とても驚いた」と語る。
「力強さ」の表現に工夫
寺田縄で陶房「芳乃和」を運営し、陶芸教室も開いている馬場さん。今回の作品はわずか7時間で創り上げた。「力強さを表現するため、鉢の口の周りに厚みを付けた。焼く工程では、最後に粘土を燻すことで黒っぽい色味に焼き上げ、色合いにも力強さが出るよう工夫した」という。
全陶展を主催する同展の高山典子会長は、受賞の理由について「色合いが独特で、デザイン性も優れている。重たさを感じさせず、上品さと安定感のある仕上がりで、審査員から高い評価が集まった」と話した。
さらなる完成度を追求
岩手県出身の馬場さん。幼い頃から絵や工作が好きで、特に油絵を楽しんでいたという。
平塚に転居したのは約40年前。「兄が寺田縄で鉄工所を始め、『手伝ってほしい』と誘われた」のがきっかけだった。
仕事の傍ら、趣味として油絵を続けていた馬場さんに、陶芸との運命の出会いが訪れたのは30歳のとき。市青少年会館で陶芸クラブが活動していることを知って興味を惹かれ、初めて作陶を体験したところ「自分の手で自在に形を創れるのが面白い。自分には立体造形が合っている」と、陶芸に夢中になっていった。
めきめきと上達し、32歳で神奈川県の陶芸展に入選。「これで自信が付き、兄の鉄工所の横に手作りの窯を造った」。仕事と両立してきたが、約20年前からは陶芸一本に専念し、創作や生徒への指導を続けている。
「陶芸はやればやるほど、さらに奥が見えてくる。来年は今年以上に完成度の高いものを創りたい。若者にも陶芸の魅力を伝えられれば」と熱意を語った。
|
<PR>
平塚版のトップニュース最新6件
|
|
|
|
|
|
|
<PR>