40年以上耕作放棄地だった早川のミカン畑を耕し、レモン、湘南ゴールド、津之輝(つのかがやき)など8種の柑橘を栽培する「みかん農園プロジェクト」が始動した。
植栽したのは、シニアネットワークおだわら&あしがら(市川公雄代表・70人/以下SNOA)。SNOAは、シニアが健康的な生活を送るための居場所を提供すべく、昨年7月に設立された民間団体。退職後「地域に戻った人の活動の場を」と目論むSNOAと、持てる技術を生かし指導できる農家を、シニアになっても活動を続け、地域の活力につながるような生き方を推進したい小田原市がシニアバンクとして仲介役となり、三者のニーズがマッチした事業だ。
「森」だった約300坪の耕作放棄地を重機で耕し、1月には早川・片浦地域活性化事業の一環で県が推奨する「未病を治す」体験プログラムにも位置付けられ、同プロジェクトについた150万円の補助金も活用し周辺整備を行った。苗木は農家の青木義隆さん(64)が手配し、3月12日には青木さんの指導のもと、1回目の植栽が行われた。この日の参加者は20人以上で、全3回で延べ80人程が参加する見込み。参加者は「ミカンを植えるのがこんなに大変だとは。何の気なしに食べていたが、これからは感謝して食べようと思う。植えた木に実がなるのが楽しみ」と期待を寄せた。今後、毎月1回程度の現地講習で育成。規模は小さいが、ミカン畑復活の兆しが見えた。
考え多様 何が根付くか
かつて景気が良かったミカン耕作も、1991年からのオレンジ輸入自由化により徐々に減退の一途を辿る。ミカン農家は大きな畑と、小規模な畑をいくつか持つことで天候などに起因する不作のリスクを分散するのが通例だ。人手があれば手入れから収穫まで行えるが、昨今の高齢化や後継者不足も相まって、利益見込みが少ない小規模な畑に手が回らず、次第に「休耕地」となってしまう。早川地区のミカン畑の「約4割が休耕地」という農家もいた。休耕地は鳥獣の住みつく温床となり、周囲に影響を及ぼす。
「これだけ相模湾をきれいに見渡せる所はないから、別荘地にすればいい。ミカンは時代に合わない」という農家の声も聞こえる。一方で、横浜や川崎、都内から人を呼び農業体験を行う農家が早川や下曽我にある。都心から近い立地、豊かな自然があることに触れ「まだ可能性がある」と下曽我の農家・川久保和美さん(61)は言った。「休耕地減少」が根付くかは、関係者の双肩にかかっている。