下中たまねぎの名を全国に轟かせようと今年3月に立ち上がった「俺たちのファーム」。休耕地を借り受け増産体制を整える中、課題だった農作業の担い手には、ニートやひきこもりの若者が一役買っている。
寒空広がる11月、広大な畑を前に黙々と定植作業に励む10人の若者がいた=写真。みな、働く事に悩みを抱える若者に対し就労支援を行う地域若者サポートステーションと、委託運営する子どもと生活文化協会(CLCA)に通う人たちだ。
限られた資金の中でいかに雇用を確保するか。声をかけたのが、知的・身的障害者支援の福祉団体とCLCAだった。ファーム代表理事の林やすなりさん(48)は「きちんとした賃金も出せない中、障害者や就労できない若者を”使う”事に後ろめたさがあった」と振り返る。だが、そうしたマイナスの考えは杞憂におわった。彼らもまた、どんな形であれ社会、そして人とのつながりを求めていたからだ。
大学を中退して以降、ひきこもり生活を送っていたTさんは、ファームでの作業を「商品となるたまねぎだから責任感が沸く」とやりがいを語る。唯一の女性であるSさんは「心をこめて作業すると美味しくなるかなって。そう考えると楽しい」と、仕事の一端を担うことに喜びを見出している。こうした姿に林さんは「働く、生きる上で大切な事に気づかせてくれた」といい、農場には互いに刺激しあう時間が流れていた。
「社会と接点を持つ機会となり、生産にもつながるウィンウィンの関係」(和田重宏CLCA顧問)の中、下中たまねぎの生産は進められている。 (完)