連載寄稿 イルカ博士の生命感動日記 【3】毎日の生活リズムが「自分になる意思」を育む
前回お話した0歳から3歳までの時期は、【1】人間になること【2】自分になることが課題でした。それには「意志」の力が不可欠です。しかし、3歳の乳幼児は、自分で意志をコントロールできません。そこで、子どもの意志を本来あるべき方向にもっていくのに役立つのが、「生活習慣」と「模倣のお手本」です。
生活リズムというのは時間で管理するのではなく、「呼吸」と同じです。例えば、朝起きて、夜眠るという無意識のうちに行っている生き物の呼吸です。遺伝によってつくられた「からだ」と「自我」がうまく結びつくためには、ある種のリズムが必要です。乳幼児の自我は意志として働いています。自意識のコントロールはできませんから大人が授乳やおむつ替えなどの順番をきめ、リズムをつくってあげることで、眠りも、また起きているときの状態も質のよいものになります。生後間もない赤ん坊のうちから生活リズムを整えてあげると、やがて早寝早起きもしっかりできるようになります。
これらのリズムをつくっていくのは大人です。リズムをつくるには、まずは「生活のかたち」が必要です。例えば、毎日の家事の順番を決めたら、いつもそのとおりに実行することです。いつも同じ反復のリズムは、子どもにとって安心して「自分になる」というプロセスに重要な意味をもちます。家庭生活の中にいつも決まった流れがあることで、子どもは安心し、周囲の人に信頼と尊敬の気持ちをもつようになります。それによって、自信がつき、結果的に自分に対する信頼感を育むことになり、自意識と他者の関係が共感脳にインプットされます。子育ての生物学的大原則は「子どもはその近くにいる大人に似る」です。大人がよくなれば、子どもは自然によくなります。その逆も真です。
実は「くり返し」のリズムがあると、お母さんたち大人もラクになります。例えば、子どもが遊ぶときに同じオモチャが同じ場所から出され、使ったあともそこに戻すことをマスターしたとします。きっと生活の中で「ダメー」を言う回数がぐんと減るはずですよ。早寝早起きから寝る前までの環境づくりも同じです。子守歌をうたう、電気を消して「おやすみなさい」。そういった「かたち」が定着すれば、子どもは未熟ながら「からだとこころ」をきちんとコントロールできるようになるのです。
【日本ウエルネススポーツ大学特任教授・岩重慶一
(問)【メール】iwashige@gmail.com】
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