連載寄稿 イルカ博士の生命感動日記 ㉔豊かな感性
これまで、赤ちゃんを生物学的にみる心の仕組みなどについて紹介してきました。
「八月はランドセルも夏休み」「しゅくだいがおわってすずしい風がふく」――。これは、ある小学生が詠んだ句です。着眼点といい、その発想や表現のすばらしさに感心させられます。きっと、学年が進むにつれて言葉の感覚は上達して、鋭さをましていくことでしょう。
このような豊かな感性は、どのようにして身に付き、磨かれたのでしょうか。
家庭、学校、読書など、さまざまなものが交わり昇華したと考えられますが、もっとも大きいのは体験活動ではないかと思います。
生物のヒトは体験を通して、見る、聴く、味わう、嗅ぐ、触れるといった五つの感覚センサー装置を働かせ、自然環境からの外的刺激を取り込み分析・行動・学習して人間に育っていくからです。たとえば、ある6年生が詠んだ句に「はきつぶしたスパイク磨く夏のはて」という句があります。汗の臭い、スポーツオイルの臭いを嗅ぎ、口にしみこむ汗の味を思い出し、輝いてくるスパイクを見つめ、蝉の声が聞こえないことに気づき、真夏とは違った風に触れています。これら五感が組み合されて「夏の果て」という言葉を考え出したのでしょう。
赤ちゃんのころからの多くの体験と親たちからの習得が、少年の五感を育み感性を磨いたに違いありません。持って生まれた生得性と体験経験を習得した知性が豊かな感性を持った人間に育てられたことと相まって、さらに感性が磨かれることを祈りたいものです。
【日本ウエルネススポーツ大学特任教授・岩重慶一
(問)【メール】iwashige@gmail.com】
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