横須賀市立ろう学校教諭の竹花康太郎さん(横浜市在住・25歳)と、同校高等部2年の鈴木雅也さん(平作在住・16歳)が、あす7月14日からカナダのトロントで開かれる「第2回世界ろう者陸上競技選手権大会」の男子棒高跳びに出場する。竹花さんは選手として同種目2連覇をめざす一方、鈴木さんの指導者としての顔をもつ。教諭と生徒が同じ種目に出場する珍しいケースだ。二人三脚で練習に励み、世界に羽ばたこうとしている。
同じ境遇、互いに支え
梅雨の晴れ間となった今月4日。不入斗公園の陸上競技場に、「JAPAN」と刻まれたユニフォームを着た2人の男の姿があった。
ひとりは竹花康太郎さん。同校に赴任して3年目になる体育の教諭だ。4年前の第1回大会で優勝を果たし、今回2連覇を狙う。もうひとりが、高等部2年の鈴木雅也さん。棒高跳びを始めて数年のキャリアながら、めざましい成長を遂げている。
2人は、程度の違いはあるが先天性の難聴で、互いのコミュニケーションは手話と、言葉を発する口の動きや表情を読み取る口話(こうわ)を用いている。出発を数日後にひかえたこの日も、助走から踏み切り、跳躍までの技術練習に余念が無かった。
竹花さんは自分の練習をこなしながら、鈴木さんに対しては身振り手振りを交えて丁寧に技術指導をしている。左腕を伸ばしてバーに見立て、右手で踏み切り後の鈴木さんの身体の動きを表現。バーを越えるまでの空中動作を再現しながら、「手に足を近づけるイメージで」「身体を使いこなして、うまく空中で逆立ちできれば記録も伸びる」などと、口話で理論立ててアドバイスした。鈴木さんも竹花さんの跳躍を見て、踏み切り位置などを随時伝える。意思疎通で苦労している様子は無く、互いに通じ合っているように見える。
潜在能力引き出す
2年前の冬、当時走り高跳びの選手だった鈴木さんに、棒高跳びを薦めたのが竹花さんだった。
その理由のひとつが、184センチある鈴木さんの長身だ。「背が高いと長いポールを使うことができ、また手の位置を高く置くこともできるので、その分強い反発力を受けます。(鈴木さんには)助走のスピードがあるので、より高く身体が舞い上がります」と評価している。恵まれた体格と運動能力の高さから「棒高跳びに向いている」と見抜き、専門的に指導をするようになった。
一方、鈴木さんも始めてからすぐに棒高跳びに魅せられたという。「走り高跳びは、バーの高さが2メートル程ですが、棒高跳びは倍近くあります。空高く舞い上がって着地するまでの時間が長く、気持ち良いのが魅力です」と語る。昨年5月に行われた「第8回日本聴覚障害者陸上競技選手権大会」で3メートルだった記録も、現在の自己ベストは4メートルジャストと、短期間で確実に成長している。
生徒の前で2連覇へ
普段の練習場所は、週に1〜2回はこの陸上競技場、その他の日は学校を使用する。助走スピードの練習やウェイトトレーニング、跳躍までの技術練習などをサイクルしながら、日々切磋琢磨している。竹花さんは、「選手としての自分の練習と、仕事としての指導と、できる限り線を引きながらバランスよくこなしています」と自身の立ち位置を話す。
聴覚障害のある選手や、児童・生徒の見本になれるよう、努力し続けている竹花さん。教え子と一緒に国際大会に出場するのは今回が初めてだという。目標は、指導者として鈴木さんをサポートしながらも、自己ベストの4メートル60を更新し、生徒の前で2連覇を果たすことだ。
対する鈴木さんは「国際大会は初めてですが、まずは自己ベストを更新したいです」と意気込む。一番身近で目標にしている竹花さんとはまだ60センチの開きがあるが、「少しずつ追いついていきたい」と謙虚な姿勢で語った。
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