「猿島わかめ」を知って 商品化めざす若手経営者
収穫量の少なさと販売経路の限定により横須賀市民でも存在を知らない人が多い猿島わかめ。「その美味しさを伝え、安定した需要と供給をめざそう」と飲食店経営者らで発足した「猿島海畑(さるしまばたけ)活性化研究会」が、地元漁師と共同で知名度向上にむけて取り組んでいる。
横須賀でのわかめ養殖の歴史はおよそ50年前まで遡る。日本のわかめ養殖発祥の地である宮城県女川町へ漁師らが視察に出向いた際に持ち帰った種を安浦港で育て始めたことが横須賀初の養殖わかめ誕生のきっかけ。猿島周辺約1キロ〜2キロ圏内の海域は潮の流れが速く水が常にきれいな状態で、リンや窒素などわかめに必要な栄養素も豊富に兼ね備えた養殖に適した漁場だという。他のわかめと比べて茎が長く葉やメカブが大きく育ち、柔らかい歯触りで食べると風味豊かな香りが広がるのが特徴だ。
しかし、一時期は50軒にも上っていた猿島わかめの養殖漁師は後継者不足などで今では10軒前後で生産量も決して多くない。その上、そのほとんどが固定客に向けた注文販売のため、市内への流通はごく僅かで知る人ぞ知る隠れた地場食材となっている。
生産者不足解消に期待
この現状を知った市内の飲食店経営者らの有志は「猿島わかめを横須賀に広めたい」と猿島海畑活性化研究会を今年2月に発足。9月には、横須賀東部漁協横須賀支所の後継者グループと共同契約を交わし、わかめ棚1区画のオーナーとなった。種付けから収穫までの生産部分を漁師が請け負い、収穫後のわかめの流通や商品化を研究会が担う。
まずは市内の飲食店や土産物店などで販売し「1人でも多くの人に美味しさを伝えよう」と目標を掲げている。猿島わかめのファンが増えれば、自然と販売経路の拡大が期待できると考える。売れる商品であることが保証されればわかめ養殖が1つの産業として確立し、新規生産者が増えるという仕組みだ。
親子二代でわかめ養殖を営む漁師・譲原亮さんも「美味しいわかめを自分たちの代で絶やさないためにも後継者不足を打破したい」と意欲を見せ、「漁獲量が落ち込む冬場にも安定収入が見込める養殖産業は今後必要になってくるのでは」と重要性も話す。
来年1月に提供予定
研究会では干し・塩蔵加工に次ぐ消費者への新たな提供方法を模索している。商品化をめざすのは通常の収穫時期より1カ月ほど早採りする柔らかいわかめ。「生わかめしゃぶしゃぶ」などオリジナリティと地元だからこそ味わうことができる付加価値をつける。今月中旬頃に種付け作業を始め、順調に成長すれば来年1月中にも収穫・提供できる見通しだ。
上町で惣菜店を営む同研究会の大湊雄治さんは、横須賀で活発化している食イベントに触れ「これまで築いてきた出店者同士のネットワークを大切にしながら、賛同者を増やしていけたら」と今後の展望を語った。
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