新春市長インタビュー 「経済対策」重点課題に
新年の幕開けにあたり、本紙では吉田雄人市長にインタビューを行った。市長は市民から求められている実効性のある経済対策を重点的に行っていくほか、マニフェストの総仕上げに全力で取り組む考えを示した。
(聞き手は本紙編集長・安池裕之)
--昨年の振り返りをお願いしたいのですが、その前に先の国政選挙で政権交代がありました。市政への影響はありそうですか。
「新政権は公共事業を通じて景気を上向かせる方針を打ち出しています。これで地方に下りてくるお金があるのかと期待しています。とはいえ、国も台所事情は厳しい。財政規律と景気浮揚の折り合いをどうつけていくのか注目しています」
--(民主党の)マニフェストと今回の選挙結果について市長の意見を聞かせてください。
「マニフェストにこだわり過ぎていた印象があります。政権運営の途中で経緯を説明することもなかった。結果、国民に厳しい審判を下されました。私もマニフェストを掲げていますが、任期の折り返しで大幅な見直しや削除を行いました。為政者は常に正直な姿勢を見せることが大切だと思っています」
--では、昨年の市政総括をお願いします。
「重点施策の一つである財政再建を着実に前に進めることができました。市長就任時に3132億円あった借金は3004億円(2012年12月時点)となり、任期中に3000億円を切るという目標に向かって順調に推移しています。『財政白書』も作成して今の状況と将来の見通しを明らかにしました。一方で、そうした中でも必要な部分への手当はしっかりと行いました。新たに特別養護老人ホームを3施設300床整備したほか、美術館活用の新機軸を打ち出しました。不育症治療費の助成など医療制度の充実をめざす『いのちの基金』もスタートさせることができました」
--かたや『水ビジネス』の断念、『自治基本条例』は議会で否決されるなど課題として残した部分もあります。
「水道事業の新会社設立には財政の健全化、地域経済の活性化、お客様サービスの向上という3つの目的がありました。これらをやらなければ、という思いが強く、勇み足だったことは否めません。ただ、目的自体を否定されたわけではないと認識しています。具体化の方策を新年度の課題としていきます。自治基本条例に関しては、提案者としては非常に残念な思いがあります。議会側の意向として住民投票条例に関する異論が強くありました。こちらも『市民が主役』という理念が否定されたのではないと受けとめています。市内5カ所で立ち上がっている『地域運営協議会』に関しても同じ考えです。こちらは自主的に地域が進めているものなので継続的に取り組んでいただきたい。市は支援する根拠を明確化していきます」
「谷戸文化を守る」施策で展開
--黒岩県知事から提案のあった震災がれきと漁網の受け入れ問題。これに関して、最終処分場のある周辺住民は「NO」の判断をしました。
「私も漁網の受け入れに向けてご理解をいただけるよう努力してまいりましたが、たいへん残念な結果になったと思います。」
--13年の重点施策をお聞かせください。
「新年の目玉となりますが、新港埠頭に3月オープンする『Yokosuka Port Ma
rket』(ヨコスカポートマーケット)です。地場産品の販売を推進していく一大拠点として機能させていきます。観光集客の起爆剤にもなるでしょう。『佐原2丁目公園(仮)』とサッカー場のオープンも同時期に控えます。昨年は三浦学苑サッカー部の全国優勝などスポーツの話題が市中を席巻しましたが、環境整備が進むことでさらに盛り上がっていくことを願っています。それとは別に加速させたいのが谷戸事業です。昨年は汐入町の空き家にシェアハウスの形で住む大学生が、高齢者の生活支援を行うモデル事業を始めました。横須賀の谷戸文化は守るべき財産。住宅政策として新たな手立ても打ち出す方針です」
--シティセールスを分野ごとに聞かせて下さい。まずは企業誘致の現状は。
「就任後の実績として4件の企業誘致を成功させました。経済が冷え込む今の状況としては、大きな成果だと感じています。企業を迎えて、雇用を生んで、税収をあげる。そこで働く人が横須賀に定住する。そのような自治体経営の理想のスパイラルが完成するよう、種々の支援制度を設けて積極的に取り組んでいます」
--観光集客と定住促進の面ではどうでしょう。
「美術館で行った『ラルク展』は大きなインパクトを与えることができましたが、実は次年度も大胆な企画を用意しています。別の視点では、世界遺産登録をめざす鎌倉市のあふれる観光客を吸収する方策もあるかと思っています。それを見据えて、鎌倉駅の駅頭で横須賀のPRキャンペーンなどを行っています。定住については、やはりターゲットは若者世代。昨年立ち上げた定住応援サイト『すかりぶ』を軸に展開していきます。SNSの効力にも注目していまして、横須賀に関連性のある著名人にこの街の魅力を発信してもらうプラットホームもつくれたらと考えています」
--地域経済の現状はどうでしょう。
「厳しさを増しています。市がもっと働きかけを強めないといけません。『Yokosu
ka Port Market』のオープンに合わせて、中央エリアでは循環バスを走らせます。これは観光客や買い物客にエリア内を周遊してもらうためのもので、商店街にも足を向けさせる仕組みを編み出していきます」
--地元経済界から景気浮揚を期待する声が一層高まっています。
「持続可能な横須賀市であり続けるために手堅くやっていることは事実です。経済活性の面で物足りなさを感じている人が存在していることも承知しています。しかし、ハコモノ建設で借金を重ねる施策だけは絶対に避けなければなりません。実効性のある経済対策。今まで以上に力を注ぐ気構えです」
--ハコモノの話がありましたので、昨年市民から請願のあった東日本最古級の洋館「ティボディエ邸」の再建について市長のお考えを聞かせて下さい。
「海事資料館も併設するとの要望でしたが、資料散逸を防ぐ努力は必要です。建物の再建に関しては、財政の裏付けがある戦略的な未来構想が固まっていない段階では、すぐには踏み出せません。残されている部材だけで賄えるのかという課題もあります。慎重に精査する必要があります」
--来年の6月には任期を迎えます。掲げたマニフェストの検証については。
「これは絶対に必要です。自己評価と外部評価を2年の折り返しの時に行った同じ枠組みで行うことを考えています」
--市長は子育て真っ只中だと聞いています。そうした世代を代表してリアルなメッセージを発信してみてはいかがでしょう。市が打ち出している子育て施策や定住の呼び込みにも説得力が増します。
「実はプライベートな時間の大半を子どもと一緒に過ごしています。裏山に登ってクワガタをとったり、釣りに出かけて、釣った魚を一緒に料理したり。そういったことの発信が同世代の共感を呼ぶことや情報交換につながるのなら考えてみたいと思います」
「佐原2丁目公園(仮)」4月に公式サッカー場誕生
横須賀市が日産自動車佐原工場跡地で整備を進めている「佐原2丁目公園(仮)」(佐原2の36)が今春、完成する。250の観覧席を備えたフルサイズの人工芝サッカーグラウンド(=写真)も新たに誕生する。オープンは4月中を予定。ナイター照明もあり、高校サッカーの県予選クラスの公式戦が行える。多目的広場もあり、市民の憩いの場として開かれるほか、災害時は地域防災の拠点としての役割を果たす。このほどサッカー場の使用料と駐車場料金などが決定した。市の担当課では、「横須賀をホームタウンとするJリーグチーム、横浜F・マリノスと横須賀サッカー協会の協力を得てオープニングイベントを実施する計画」と話している。
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