三浦半島の南端に位置する城ヶ島・三崎エリアの観光活性に期待が高まっている。昨年11月に県が推進する「新たな観光の核づくり構想」の第1号認定を受けたほか、先ごろは外国人向けの旅行ガイド「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」の2つ星に選ばれるなど、追い風となる好材料が揃いつつある。自治体の生き残り戦略に観光振興は重要なウェイトを占めており、三浦市も本腰を入れて取り組む姿勢だ。「第4の観光の核づくり」の旗振り役である黒岩祐治神奈川県知事に話を聞いた。
「潜在力」を持っている
--黒岩知事が「第4の観光の核づくり」を宣言してから三浦半島、中でも城ヶ島・三崎エリアで観光活性に向けた新しい動きが始まっています。まずはこのエリアに関してどんな印象をお持ちですか。
「知事に就任してから30数年ぶりに城ヶ島と三崎を訪れましたが、あまりの寂れ具合に驚きました。『昔はもっと観光客がいたよな』と思いながら島内をずっと廻ったのですが、圧倒的な海の景観に大きな衝撃を受けたのです。直感で『超一級の観光地になれるパワーを持っている』と感じました。そこで頭に浮かんだのがポテンシャル(潜在力)という言葉。これを活かす戦略と本気のパワーがあれば、きっと再生するに違いないと」
--城ヶ島を訪れる年間観光客は1970年の211万人をピークに下降線をたどり、現在は100万人程度と半減している状況です。回復の特効薬はあるのでしょうか。
「元気のない地域に限って『何とかしてください、補助金を』と県に要望してきます。そうした声に応えて駅や道路を整備するとどうなるか。皮肉なことにストロー効果で他の地域に人を吸い取られ、もっと寂れてしまいます。城ヶ島だけでなく、どこでも補助金を投入してハード面を整備するだけで観光客が戻ってくるとは思えません。街の魅力づくりを地域が一枚岩になって取り組むことが先決。魅力があれば観光客は時間とお金をかけてでもやってきます。県の役割は地域の意欲を喚起することです」
--地元のムードを高める手段として「第4の観光の核づくり」を打ち出した訳ですね。
「県内には横浜・箱根・鎌倉といった観光地があります。海外に誘客のプロモーションをする際に、もう一つの核が欲しい。第4はきっとある。そう思った時に浮かんだのが城ヶ島・三崎。これが「第4の観光の核づくり」の発想の発端です。ただし、どことは言わずに、県内各地から名乗り出てもらう形を取りました。実効性のある観光戦略をコンペ方式で競うことで、よりよい提案を引き出したいというのが狙いでした。そうした厳しい審査を経て第1号の認定を受けたのが「城ヶ島・三崎」なのです。現在までに、大山(平成大山講)、大磯(保養地再生)も認定されています。今は『第4の核』の候補が3つ並んでいる状態。県としては、本気度の高いところを全面的に支援していく方針です。あくまでも地元次第で県が主導すべきでない、との考え。『第4の核ができました』と発表することはなく、時期に関してもあまりこだわっていません」
--三浦市からの提案とはどんなものでしょう。
「『ホテルになった村』というコンセプトでした。長期滞在型の保養地として、得意とする食の分野(地産地消)を組み合わせて未病対策や健康長寿をめざすもの。城ヶ島から臨む海や富士山の眺望に加え、新鮮な地場野菜やまぐろを活用して、”医食農同源”の体感空間を民間資本を呼び込みながら構築していくとのこと。この提案によればシニア層は大きなターゲットとなるでしょう。スケール感がありますので、実現すれば海外から訪れることも期待できます。共通のキーワードはやはりリピーターの獲得でしょうね」
漁師町の風情も観光資源
--実際の地元の動きはどうでしょう。
「吉田英男市長を先頭に事業者と地元が一丸となって動き始めています。『これは本物だな』との印象を持っています。この間の休日、自分で車を駆って城ヶ島に行ってみましたが、『新たな観光の核〜認定』の横断幕が風になびいていました。観光客もだいぶ来ていました。早くも『第4の観光の核』というメッセージが大きなPR効果を呼んでいます。ただ、迎える側はまだまだでしょうか─。街並みの統一感なども含めエリア全体が一枚岩となり、街独自の価値を高めていく必要があるかもしれません」
--三浦市は長期滞在型の保養地をめざしているとのことでしたが、現在は観光に訪れる人の大半は日帰り客です。
「県では商店街を観光スポット化する事業にも着手します。三崎の商店街なら漁師町独特の景観や懐かしい雰囲気を楽しめるので観光として成立するでしょう。城ヶ島めぐりとリンクさせてみるのも面白いです」
--最後にメッセージをお願いします。
「ミシュラン・グリーンガイドで城ヶ島が2つ星の評価というのは、まさにこのエリアが持つ潜在力だと思います。これをまだ本当に活かしきれていません。神奈川最大の観光スポットになるよう、頑張りましょう」
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