走水海岸 アサリの密漁深刻 「採算が心配」と嘆く声も
走水海岸で有料潮干狩り場を運営する横須賀市東部漁協走水大津支所は、潮干狩り禁止区域で相次ぐアサリの密漁に頭を抱えている。立て看板や監視で注意を促しているが完全に排除することは困難で、家族連れや転売目的で大量に採捕する違反者が後を絶たない。漁師の生計を脅かす事態となっている。
名水が湧き出て、高級のりの産地として全国的に有名な「走水海岸」。淡水と海水が交わり、栄養分が豊富な漁場で育つアサリも味や大きさに定評がある。毎年ゴールデンウィーク頃にシーズンを迎えると、ピーク時には1日に2千人を超える観光客が潮干狩りに訪れ、賑わいを見せている。その一方で、海でのルールを守らない違反者によって水産資源が乱獲されるなど漁場が荒らされ、同漁協の漁師たちの漁業権が脅かされる問題が発生している。
市内のほとんどの海岸には共同漁業権や神奈川県海面漁業調整規則が設定されている。漁業者の生活の糧となる魚をはじめ、アワビやサザエ・アサリなどの貝類、ワカメやコンブ、テングサなどの海藻類を漁業者以外が免許や許可なく採捕することは法律(「漁業法」第143条に基づき、違反者は20万円以下の罰金が科せられる)で禁止されている。
走水海岸では、およそ3〜4年ほど前から潮干狩りが禁止されている区域での採捕行為が目立ち始めてきた。特に転売を目的とした密漁者が悪質化し、水産資源として漁師が保護培養しているアサリを大きさに関係なく大量に持ち帰るケースが後を絶たない。
収益減で漁師は溜息
これらの現状に漁師が頭を抱えるのには2つの理由が存在する。まず、潮干狩りは有料会場(中学生以上2キロまで1200円、小学生以下1キロまで600円。超過分は1キロ600円)で行われていることが挙げられる。観光潮干狩りは漁師らの夏場の貴重な収入源となっており、来場者の減少は収益に直接的に繋がってしまうのだ。
また、シーズン中は三重県伊勢湾から購入したアサリを数回にわけて撒いている。その数は毎年2トン〜3トンにも及ぶ。冬場は禁漁にしていることから、シーズン初め頃は走水の天然アサリが多く採れるが、少なくなると補充のために撒いているのだという。今年のアサリは全国的不漁の煽りを受けて価格が高騰し、例年以上の上昇傾向にあることからも、漁協関係者は「安定供給のためとはいえ、採算が合うか心配だ」と溜息交じりに語る。
もうひとつは水産資源に関する問題が挙げられる。アサリは毎年6月〜9月に産卵期を迎える。そのため漁師たちは来年の漁獲量の確保に向けて、産卵用の親貝としても広くアサリを撒いているという。本来であれば生育を待たなければならないのだが、転売目的とみられる違法道具を使った大量の乱獲が行われるたびに稚貝や成貝関係なく減少し、次年以降の漁獲高にも影響を及ぼしている。
密漁者の完全排除に苦慮
相次ぐ密漁対策として、「採捕禁止」を訴える看板(=写真左)を海岸沿いに立てて注意を喚起したり、漁協組合員から相談を受けた横須賀海上保安部と共同で陸上と海上からの監視・パトロールを行うなど取り締まりを強化している。既に今シーズンに入ってからも検挙、書類送検されたケースも出ており、一定の効果は出ているものの、完全な排除は難しく現在もいたちごっこが続いている。漁協は「潮干狩りは定められている場所で楽しんでほしい」と呼びかけている。
今年度の走水海岸の潮干狩りは7月10日(水)まで行われる。
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