回顧 2014 人口減に観光集客で一矢 紙面から振り返る横須賀の1年
ソチオリンピックに始まり、サッカーW杯など賑やかな話題の反面、大雪・台風など自然災害の被害も多く、まさしく激動だった2014年。横須賀の1年を、タウンニュース紙上の記事で振り返り、その後の動きを追った。「人口減」という厳しい現状にありながらも、観光・食・再開発・スポーツ…と、来年に続く明るい話題もあった
歴史遺産・サブカルで誘引
12月の市議会で「観光立市推進条例案」が可決。市内に点在する観光資源を活用しようという動きが本格化している。その目玉となりそうなのは今年11月、国指定史跡に内定した東京湾要塞跡「猿島砲台跡」「千代ヶ崎砲台跡=(1)」。近代遺産の中で、国防の砲台遺構が国指定史跡になることは例がないという。来春にも登録となる見込み。市では現在非公開の千代ヶ崎砲台跡の活用も考えている。
来年、横須賀製鉄所起工から150年の節目となる中、かつての技術にも注目が集まっている。現在「船の科学館」が所有する戦艦陸奥の主砲=(2)が、建造の地である横須賀へ「里帰り」することが11月に決まった。移設候補地はヴェルニー公園。再来年の移設を目指し、市内の経済団体などが中心となって募金活動を行っており、関連のグルメ企画なども検討中だ。
サイクリストにPR
観光集客の一手として、サイクリストを三浦半島に誘客する動きも始まった。4市1町の「三浦半島サミット」で自転車での観光客に着目。周遊モデルなどを記載した「自転車半島宣言」パンフレットを作成した。内容に不備等があり、回収騒動になったが、修正のうえ年明け以降、再配架される予定だという。
艦船に熱視線
軍艦や艦船を題材とした企画も活発化している。4月に行われた『護衛艦カレーナンバー1グランプリ』では、市外からの観光客で賑わいを見せた。さらに、軍艦をモチーフにした食のイベント「軍艦めし」も有志団体の発案で催された。
こうした企画に影響を与えたのは、オンラインゲーム「艦隊これくしょん(艦これ)」の人気。物語の舞台を辿る『聖地巡り』も盛況で、「艦これ」に関連して、記念艦三笠や軍港めぐりなどが定番スポットとなっている=(3)。記念艦三笠では、今年度の来艦者数が、昭和45年以来の20万人超えを見込む盛況ぶり。この流れを好機ととらえ、サブカルチャー(アニメ・マンガ・ゲーム)で地域活性を探る「横須賀Sプロジェクト」もスタート。11月にはシンポジウムも開催された。
サブカルの聖地化だけでなく、横須賀を現実の舞台とした映画を制作しようという動きも加速している。昨年発足した「まるごと横須賀の映画を作る会」では、製作会社を立ち上げ、協賛金募集や周知活動を活発化。作品のタイトルは「スカジャン兄弟」。先頃、主人公の母親役として、市内出身の歌手・渡辺真知子さんの出演が決定している。
大型店の進出続
複合商業施設の開業も話題になった。6月には平成町にノジマモールがオープン。三浦半島への初進出となったスーパー三和を含め、この一帯は生鮮食品スーパーが乱立している。さらに、同モール内のノジマや三春町から米が浜に移転オープンしたヤマダ電機など、価格と独自のサービスの競争が激しくなっている。
また、久里浜の工場跡地に来年、ヨークマートが開業予定。さらに大津のエイビイ跡地では、ユニクロなどが出店する衣料品店舗が、来春のオープンにむけて工事が着々と進んでいる。
商店街も独自企画
大型店舗の出店に対抗するべく各地区の商店街も、独自の集客に知恵を凝らす。追浜銀座通り商店会では、追浜駅前のデジタルサイネージに流すコンテンツとして、各店舖や地域団体・学校などが参加しAKB48の「恋するフォーチュンクッキー」を踊った映像を制作=(4)。YouTubeでの12月現在の再生回数は約5万2千回となっている。
久里浜商店街では、ゴジラ生誕60年、くりはま花の国のゴジラ滑り台の設置15周年の節目を、独自イベントと絡めてPR=(5)。先ごろ、第1作の上映会やテーマソングの演奏会が行われ、街がゴジラ一色になった。
また、市内の各商店街では6月に「プレミアム商品券」を発売。さらに、商工会議所との合同企画で、商店街に加盟する200店舗が「ワンコインスタンプラリー」を実施するなど、地元店舗の利用を促すイベントで賑わいを見せた。
最重要課題は人口減少
1月に公表された住民基本台帳人口移動報告で、市外に転出する人口が転入を上回る「転出超過」が顕著になっている。「全国で最も人口減が進む自治体」−と市が突き付けられた課題は人口減対策。『住むまち』としての魅力を高めるため、5月には外部専門家3人を「こども政策アドバイザー」に招聘=(6)。パネルディスカッションや『横須賀魅力全集』の発行など子育て世代の定住化を狙う施策を掲げる。
民間では10月に商工会議所を中心とした「新生・横須賀実践フォーラム」が立ち上がり、既にいくつかの事業が具体化している。
また、SNSを活用した地元出身者の交流の場も増えている。市や地元NPO法人などが、それぞれフェイスブックページを立ち上げ、来訪・集客促進や将来のUターンを狙う。個人への働きかけ以外にも、IT産業の集積地を目指した「ヨコスカバレー構想」を打ち出し、キックオフセミナーを開催。YRPや汐入地区の空き家を活用した誘致にも力を入れている。
小児医療の充実化
「子育てしやすい街」を掲げる市では、来年10月を目途に小児医療費の助成対象を小学6年生まで引き上げることを決定した。しかし市民病院では、小児科の入院が4月に休止。再開の目途は立っておらず、小児科自体の廃止も危惧される。その一方で、小児科の体制が整い、横須賀共済病院・うわまち病院で周産期母子医療センターが再稼働・新認定されており、地域の医療格差も浮き彫りになっている。
施設適正化で議論
市では厳しい財政状況の中、既存の公共施設の総面積を17%減らす「施設適正化計画」素案を公表。約600件のパブリックコメントが集まり、市議会や市民説明会では異論も頻出している。また、「中学校給食実施」に向けた市民活動も活発化。先月、市議会に提出された請願は否決されている。市は配達弁当の「スクールランチ」を拡充する方向性を固めており、来年1月には3回目の試行事業を行う。
軟式野球全国準V
スポーツ関連では、2020年の東京オリンピック開催に向け、衣笠IC近くの「Y−HEART計画地」へのナショナルトレーニングセンター(NTC)誘致活動が具体化している。6月には誘致委員会が発足。文科省への要望書提出やパンフレット作製など、積極的なPR活動を進めている。
“軟式の甲子園”の頂点まであと一歩−。三浦学苑高校の軟式野球部が県大会、関東大会を制し8月、全国大会へ初出場した=(7)。惜しくも準優勝で涙を飲んだが、軟式野球の魅力を広めるのに一役買った。
サッカーでは今年1月、「横須賀マリンFC」が発足した。横須賀市サッカー協会が運営する社会人チームとして、県3部リーグに挑戦。10戦10勝の幸先良いスタートを切った。2部昇格を掛けた入れ替え戦は、来年1月に行われる。
再開発も本格化
4月には新港町に救急医療センターが完成し、隣接する場所には、横須賀警察署が来年7月に移転。これで、新港埠頭交流拠点の「賑わいゾーン」「官公庁ゾーン」の整備がひと段落する。タワーマンションの建設を中心とした横須賀中央駅前の再開発も本格化しており、市中心部のまちづくりの行方に注目が集まっている。
新たな賑わい創出も
長野県諏訪の伝統行事を、大津諏訪神社で再現する『御柱祭』が行われたのは8月。大勢の曳子や見物客に見守られて、重さ4トンの御柱が道路を横断する姿は圧巻だった=(8)。祭りの賑わいに街も沸いた。
実現するか、突如浮上した話題もあった。西浦賀の愛宕山に「日本竜馬会」が坂本竜馬の立像を建てるというもの。その高さは40m。敷地内を歴史記念公園として整備する計画だ。現在、事業認可の手続きを準備している段階で、予定地入口には設置をPRする看板も掲出されている。
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