この春、横須賀市立中学校23校に入学した新1年生は3357人。横須賀市では10年ほど前から「学校選択制」を導入しており、約10%に当たる335人が、住所で指定された学校とは違う中学校に通う。進学先を選べるという反面、防災や安全面での対応を心配する声も上がっている。
横須賀市では、2003年度から2年間、エリアを限定した「学校選択制」を試行。05年度から全校実施している。その目的は、学校の活性化。中学校選択の機会を設けることで「学校生活への関心や進学に対する意識を親子で高めるため」としている。一方、中学校側も”選ばれる”ことで、魅力ある学校づくりなど意識改革を求められる。
選択範囲は、市内を北・中央・衣笠・東・南・西に分けた6ブロック。住所から指定された中学校のあるブロック内、もしくはブロック外で隣接している学校を選択できる仕組みとなっている。学校の所在地によって違いはあるが、最大9校から選ぶことができる地区もある。各校の受入上限は40人(久里浜中のみ20人、常葉中・浦賀中は受入枠なし)。受入枠を超えた学校は抽選となる。今年度、他学区からの希望が多かったのは久里浜中だった。
理由は友達・部活動
学校の選択理由はさまざまだが、昨年2月に市が小6児童と保護者、中1生徒、教員に行ったアンケートでは「仲の良い友達と同じ学校に」「加入したい部活動の有無」「学校の近さ」が上位に挙がっており、規模の大きさや、部活動が盛んな学校が注目される傾向もある。一方で、学級数やクラスの人数が少ない小規模校では、きめ細かい対応ができるとしており、これを選ぶ生徒もいるという。
「小中一貫」に矛盾
教育の機会を選択することに一定の評価はあるものの、実施から10年以上経ち、課題も多く見られる。この10年での選択率は、全体で概ね10%前後で推移しているが、県内で同様の選択制度を設けている自治体はなく、全国的に見ても、制度自体を見直す傾向が強いという。
さらに、横須賀市では現在、小中連携・一貫教育にも取り組んでおり、「同じ地域で9年間、児童生徒を育てる」という連続性を持った指導を行っている。アンケートの記述でも教員から「小中のつながりを意識した指導をする中で、選択制は矛盾するものではないか」という指摘もあった。
また、家庭・学校・地域の連携が薄れてしまうという危惧に加え、東日本大震災以降、防災や安全面でも学区外の生徒への対応が難しいとの声もある。電車やバスで通学する生徒もおり、見守りの目が及ばないことへの不安もある。現状としては特別な事情による「指定変更就学」の制度もあるため、「この要件を緩和すれば、選択制は必要ないのでは」という意見も見られる。
一昨年の市議会では、この制度に関して当時の教育長が「今後の見直しに検討を進める」と答弁しており、現状としては、教育委員会内で検証を行っている段階。来年度入学の生徒については制度を継続するという。
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