長瀬にある児童養護施設「しらかば子どもの家」で先月27日、「お別れ会」が行われた。創設されて5周年を迎えた同園では今年、初めての”卒業生”が施設を巣立つ―。
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阿部雄輝君、18歳。横須賀工業高校を卒業し、今日1日(金)から水道機器メンテナンス事業を行う会社で勤務する。晴れて社会人になることについて「期待も不安もあり、ドキドキしている」と今までなかった「自由」と「責任」その両方を一気に背負う戸惑いの心境を口にする。
中学2年生の時から5年間過ごしてきた施設での生活を「あっという間だった」と振り返る。当初は周囲との距離感に悩むこともあったが、年長者として、自分以上に戸惑う年下の子どもたちや弟たちの面倒を見てきた。施設からの退所を間近に控えた3月末でも「面倒を見てやれないのが心配」と自分のことよりも彼らを思いやる。将来の夢は「普通の家庭を築いて、しらかばに恩返しの支援ができれば」と穏やかに話す。
住居確保を優先
阿部君の”卒業”においては同園の後援会から、資格取得用の支援金や卒園支援金、実印などが贈られた。同施設の職員は「施設の財政面も苦しく、後援者の善意によって支えられている面も大きい」と話す。
現在の児童福祉法では高校卒業と同時に、施設からの退所を余儀なくされ、福祉手当等も打ち切られてしまう。阿部君も就職活動で第一に優先したのは仕事内容でも、勤務地でもなく「社宅があるところ」と答える。支援金がない状況で、家賃を払い続けるのは経済的に苦しく、保証人の確保も難しかったため、住居を保障してくれる企業を選んだ。
経済的事情などを考慮した20歳までの「措置延長」が国の制度で設けられているものの、「すぐに困窮に陥る可能性が高い」などの条件があり、門戸は狭い。実際に今回のケースも受け入れられなかったという。
濱田理事長は「現場としては制度の改善を求めたい。周囲の環境が一変するので大変かもしれないが、”しらかば育ち”として立派に輝いてほしい」と阿部君にエールを送る。
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