走水小の児童らが作った架空の化石、布や羊毛を用いたキノコや植物の造形、紙やモデリングペーストで作られた魚や昆虫などの「幻想標本」、人間の大きさに拡大した昆虫の超高解像写真――。これと同じ空間に展示されているのが、横須賀市自然・人文博物館(深田台)が所蔵する化石や鉱物・昆虫・動植物などの学術的資料。「どれが”本物”なのか、不思議そうに帰られる方もいます」
現在、横須賀美術館で開催中の『自然と美術の標本展』は、「モノ」を「みる」からはじまる冒険―がテーマ。「ある博物館で見た展示の造形や色彩に、心が動かされたのがきっかけ。自然史の資料と美術作品を見ることに、差はあるのか?そんな想いが浮かんだ」と企画を進めてきた美術館学芸員の中村貴絵さんは話す。現代アートの作家6人と画材ラボ「PIGMENT」が出品し、市自然・人文博物館の協力で標本資料も並ぶ同展。「自然が創り出した造形や色、これらに影響を受けた芸術作品には親和性がある」と話すのは、博物館学芸員の山本薫さん。今回は市内で採集した植物標本を展示している。企画展に際し、出品作家も博物館を訪れ、共に選んだ標本資料もあるという。「学術的な見せ方だけでなく、(美術館での)空間の使い方など刺激になった」と話す。
展示室の後半には、「PIGMENT」による約200色の天然顔料や墨もずらり。接着剤となる膠(にかわ)も約30種、動物の皮や骨などが原料だ。「美術作品は自然から生み出されている。物質的にも、古来からつながりがあるんです」
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ミュージアムとは元来、美術館・博物館双方を指す。自然の標本と現代アートを「みる」ことに思いを巡らす体験…これにもう一つ、大切な意図がある。「作品を見るよりも、添えられた説明や文字情報で”分かったつもり”になっていないか」と、従来の鑑賞に疑問も感じていたという。「”見る”ことの純粋な行為を、自発的な学びや”知”の冒険につなげたい」と中村さん。企画展会期は8月21日(日)まで。問い合わせは同館【電話】046・845・1211
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