レンガ造りのノスタルジックな外観、中に見えるのは2mをゆうに超える貯蔵タンク――。「横須賀ビール」と名を付した醸造所(ブルワリー)が今年2月、大滝町にオープンする。
生産者の”誇り”形に
「ビールは大人を笑顔にする。地元の食材を掛け合わせた、”横須賀の集大成”を提供したい」。そう話すのは、市内外で飲食店を展開する、(有)たのし屋本舗の下澤敏也さん。
追浜で居酒屋を開業したのが20年前。経営に行き詰り、ふと見つめなおしたのが、自分の足元にある三浦半島だった。毎日、海や畑の生産者と顔を合わせて、新しい食の発見。半島の三方は海、獲れる魚の種類も違う。そして、多種多様な味わい深い野菜を作る人たちがいる。これを横須賀の”誇り”と胸に刻んだ。
生産者と消費者をつなげるイベント「三浦半島大収穫祭」など地域での活動に加え、規格外や余剰となった農・海産物の加工場も立ち上げた。さらに昨年、地元農家と農業生産法人を設立。そんな中で、構想を巡らせていたのが、クラフトビールの開発。元来のビール好きが高じたものでもあったが、「食のブランド化を発信する拠点を作りたい」という想いも重なった。
まちづくりの循環
横浜のビール専門店に教えを請い、昨秋にはクラフトビールの一大産地・ポートランドへ視察に赴いた。ブルワリーの数が世界一と言われ、「食材が豊かで、生産者やクリエーターの動きも活発な街」。そこに、ビールや食事を楽しむ人の輪ができている。地域のブランド化に成功した例と言われており、まちづくりという視点でも、この”循環”は魅力的だった。
振り返れば三浦半島にも同じような土壌がある。ビールの材料は、いたってシンプル。「見回せば良質な素材が近くにたくさんある。これを使わない手はない」と下澤さん。三浦産の小麦や走水の湧水、津久井産みかんや、地元の生姜を使ったビールも考えている。
店舗では、スタンディングで気軽に飲めるスペースや飲食フロアに加え、地場産物のマルシェも常設する計画だ。店内の家具・機器類は、市内の金属加工会社に製作を依頼。農漁業と食を超えた「ものづくり」の連携も模索する。
「ヨコスカプライド」
最初に語った「大人を”笑顔”にする」という言葉の真意はこうだ。美味しいビールを飲んで暗い顔をする人はいない。明るい表情を見れば、子どもも笑顔になる。「ポジティブな空気を街の活気につなげたい」。次に描く夢は、農場の真ん中にブルワリーを設け、収穫や加工の体験をしながら、ビールと料理を楽しむ―そんな空間だという。
貯蔵タンクに貼ってあるラベルには「ヨコスカプライド」とある。地元の魅力発信を矜持に、走り続ける。
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