洗練された本物の技術から生み出すのは単なる和菓子ではなく「アート」だ―。
衣笠栄町在住の三堀純一さん(42)は自身を「菓道家」と称し、和菓子作りにおける精巧な技、そして美しい所作など、一連の動きを「アートワーク」として表現している。昨年から本格的に活動を始め、国内にとどまらず、アジアにもその場を拡大中。完全な球体の練りきりの上に花鳥風月を表現する「玉華寂菓(たまはなじゃっか)」、より細かい作業が可能となる「針切り箸」の考案など、生み出してきたものは自身の名前から「ミツボリック」と呼ばれ、国内外から高い評価を受けている。
三堀さんは老舗和菓子店「いづみや」の3代目代表。横須賀おみやげコンテストの優勝作品「かりんとうまんじゅう」の生みの親で、和洋のスイーツをテーマに職人が集ったテレビのコンテストで優勝するなど、多くの場で注目を浴びてきた。
そんな三堀さんが同店の経営から離れ、「菓道家」として目を向けたのが海外。それは、先代の頃と比べ10分の1程度に周囲の店舗が減るなど、衰退傾向にある和菓子業界を慮っての行動だった。「自国の文化を効果的に伝えるには”逆輸入”だと思った」。周囲に流されやすい日本人の気質、海外の評価が高まれば、自然と認められるはず。そこで掲げた思いが”偏東風”。日本から起こす風を西へ西へと広げていく、最終目標地点は芸術の都、パリ。「そこで西洋の人たちに認められた時、日本にも波がやってくるはずです」
* * *
昨年は足がかりとしてアジアへ飛んだ。中国やベトナムなど5都市を10回以上訪問。国内も含めて多くのショーパフォーマンスやワークショップを開催して実績を積むと、その反動は早かった。イタリアやスペインなど各国のメディアから取材を受け、1、2月創刊の雑誌に掲載される。
その流れを受け、欧州で認知が高まるであろう来たる3月、偏東風の青写真が実現する。お呼びがかかったのは「パリ」だ。ブックフェアにおける写真集の販売、そしてショーの依頼。「私にとって世界に放つ大事な第1投、勝負の年です」話す言葉に力がこもる。
* * *
「例えるならイチローではなく野茂英雄に」。パイオニアとして自身が歩む新たな道に、後進たちが続くのが理想だ。その先に、育った地元で見たい光景がある。毎年、衣笠商店街で開かれる夏祭りで近隣の園児たちが将来の夢を書く七夕の短冊、「そこに和菓子職人や菓道家といった文字が並ぶこと、それが私の夢です」
|
<PR>
横須賀版のローカルニュース最新6件
|
|
|
|
|
|