きっかけはパレードへの憧れ
「東京銀座のパレードに出たい」―。2016年リオパラリンピックのメダリストたちの姿を見て思った。パラテコンドー日本代表候補の阿渡健太さんは、17年に競技を開始。昨年のアジア選手権で準優勝を果たすなど、パラリンピックへ着実に近づいている。
テコンドーは、韓国発祥の武道で足技を主体とするフルコンタクトの格闘技。胴のプロテクターやヘッドギアを着用し、攻撃がクリーンヒットするとポイントが入る。時間内に獲得したポイント数で勝敗が決定。パラテコンドーでは、上肢に障害のある選手が出場する。
生まれつき両腕に障害をもつ阿渡さん。城北小1年生の頃からサッカーをはじめ、衣笠中、逗葉高校、社会人でも続けていた。高校卒業後はエンジニアリング最大手の日揮株式会社に就職。現在も人事や労務管理の部署についている。
パラリンピック出場を考えたのは、東京開催が決まっていたことも大きかった。自分に合った種目を探そうと都内で開かれた選手発掘プログラムに参加。そこではじめてパラテコンドーに出会った。「サッカーで培った脚力と身体能力が存分に活かせる」。はじめて1年足らずで参加した初の公式戦は、世界大会だった。結果は2回戦敗退。負けた相手は当時世界ランク1位の選手だった。「ぼっこぼこにされた」と笑いつつも「トップレベルと自分の差を知ったと同時に、自分でも追いつけるのではないかと感じた瞬間でもあった」
「仕事との両立」乗り越え
本格的に練習を始めて1年が過ぎ、技術も上達。全日本大会や世界大会で上位に食い込めるようになり、日本パラリンピック委員会の強化選手にも選ばれるほどに成長。しかし、仕事との両立という壁にぶつかった。「アスリート制度のある企業へ転職をしようか」―そんな思いを上司にぶつけたところ、実績や強化選手に選ばれていることなどを評価してもらい、会社初のアスリート制度が設立された。自身が労務管理を担当していたことも活きた。それまでは週5日フルタイムで働き、仕事後に練習をこなしていた阿渡さん。希望が叶って週3日の勤務になり、練習に打ち込める環境となっている。「実践だけでなく、筋力や体幹を鍛える時間がとれるのは大きい」
目標がその日を支配する
競技の魅力は「障害の程度によって戦い方が変わるところ」。阿渡さんの場合右腕のほうが短いため、左手を前に構え胴体をガードする。選手それぞれに障害の特徴や弱点があるため「映像などを見て、事前にどれだけ相手を知ることができるかがカギ」。世界の舞台では自分より身長が大きく足の長い選手がほとんど。「持ち味はサッカーで身に着けた体力・運動神経。素早く相手の間合いに入り込むのが自分のスタイル」
座右の銘は、「目標が、その日その日を支配する」。横浜高校野球部の名将・渡辺監督が発していた言葉を知り、心を打たれた。「パラリンピックに出場することとメダルを獲得すること、どちらを目標にするかで意識や行動は大きく変わる」。今月26日の最終選考会で代表が決まる。「自分がやってきたことを信じるしかない」
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