横須賀美術館で開催中の企画展「ビジュツカンノススメ」は、アートを楽しむ4つのヒントを提示しながら、鑑賞体験につなげていく内容だ。
4章構成で、「作品のつくりかた」をテーマにした3章では、制作のプロセスを展示作品と作家のインタビューで紹介している。これに出展している市内在住の2人の作家に、創作の手法や美術館での「鑑賞のススメ」を聞いた。(文中は敬称略)
―地元の美術館での展示かつ「鑑賞の楽しみ方」をテーマにした企画展です。自身の作品を出展する感想は。
中川 美術館で作品を楽しむという「企画展」のテーマの中で選んでいただき嬉しい。多くの人に見てもらいたいという気持ちが強まりました。開館当初は(館内が)明るすぎると思っていたのですが、ワークショップ室の講座で作品を掛けたとき、絵の重ねた色を「感じる」ことができたのは光の作用。自然光をうまく取り入れた美術館だなという印象があります。
滝波 この美術館での展示はやはり嬉しい。現代美術というと、まだまだ分かりづらいという印象があるかもしれませんが、さまざまな角度の見方が存在し、アートには世界や社会を見る切り口もある…ことなど、難しいイメージを少しでも和らげることができれば、と思っています。(1人の作家に焦点を当てた展示も良いが)こういった企画は意欲的で面白い。
―今回は、展示室内でアトリエでのインタビュー動画も放映されています(YouTube「横須賀美術館」のチャンネルでも配信中)。作家本人による制作過程の解説はアートの「ビギナー」にも興味深いですね。
中川 動画でも紹介していますが、私の制作方法は少し変わっているかもしれません。筆ではなくゴムベラを使っていたり、和紙と綿布を重ねたり。紙やすりで円形に削っていく過程を加えて「複合的な見え方」が浮かび上がります。気配や触覚といった知覚作用が一つの画面の中で混ざりあっています。
滝波 インタビューで話しながら見せるというのは、理解につながりやすいと思います。動画では「汽水域」というタイトルについて説明していますが、テーマや方向性に加え、制作過程に触れることで、より興味を持ってみてもらえるのではないでしょうか。
―企画展のテーマ、美術館鑑賞の「ススメ」を教えてください。
中川 私自身も海外のギャラリーや美術館で見た時の記憶は、今でも呼び起こされます。皮膚感覚、五感+αの刺激とでもいうのでしょうか。実際に観て「対峙」することの意味は、そういうところにもあるのかもしれません。美術館という場での鑑賞は、本物の感性を育ててくれるものだと思っています。
滝波 今回展示している「汽水域04―C―8」という作品は、厚みが61cmあります。正面で描いている絵具の重なりの順番や手順が見えているのですが、この「作品の経過」も表現の一部。写真や映像では、その側面を含めた立体感を空間で感じることは少し難しいでしょう。展示の場で「観る」楽しみは、こういう部分を「感じられる」ところにもあるのかもしれません。私自身も、横須賀美術館は刺激を受ける場所。訪れるのを楽しみにしています。
*2人の写真は展示作品の前で撮影しています
*企画展会期は11月7日(日)まで、同月3日(水)は無料観覧日
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