新型コロナの猛威に振り回され、「Withコロナ」がキーワードとなった2021年。横須賀市内では5月にさいか屋と横須賀アリーナの両会場を皮切りにワクチン集団接種が開始され、感染拡大を抑えつつ経済や教育、文化活動が展開された。現在は商業活動やイベントの再開が少しずつ進み、日常を取り戻す動きが見られる。そんな1年を紙面から振り返る。
【行 政】
新型コロナの感染拡大防止で、政府から発せられた不要不急の外出自粛や飲食店の時短営業要請により、市民生活と市内経済は大きな影響を受けた。図書館や体育施設、ソレイユの丘などの大型公園は使用が制限される異例の事態となった。
経済活動のストップを余儀なくされた事業者も多くあり、特に飲食店へのダメージは大きかった。市はその支援策として、店舗販売以外での販路拡大を狙ってキッチンカーの導入を推進。事業者に対してそのノウハウを学ぶ講習会を実施し、市内公園などでの出店機会を用意した。
長年の懸案だった追浜駅前の整備に動きがあった。「地域密着型バスタ」の事業計画が市と国土交通省関東地方整備局によって策定。バス停を集約し、公共施設・商業施設を立体的に配置する方針が打ち出された。
市のふるさと納税の寄付額が昨年と比べて大幅に伸長した。けん引したのが今年1月に追加となった、浦郷町に工場を構えるオカムラのオフィス用椅子などの返礼品。コロナ禍の在宅勤務といったテレワーク環境下の需要にうまくマッチした。12月には横須賀美術館の展覧会とアクアマーレのディナーコースをセットにした特別メニューが返礼品に追加されている。
公共水域の芦名漁港で民間事業者による無許可の埋立、占有が行われていたことが発覚。市は杭の撤去を指導し、事業者がこれに従った。
新港町と北九州を結ぶ「東京九州フェリー」が7月に就航。運航に伴う港の利用に関し、市と港湾事業者、近隣住民の間で意見の相違があったが、国土交通省が仲裁に入り、10月に基本合意に至った。
市長選と衆院選の2つの選挙があった。市長選では上地克明市長が新人で市民運動家の岸牧子氏との一騎打ちを制し、再選。2期目をスタートさせた。投票率はコロナ禍の影響もあり33・41%と過去2番目の低さだった。10月の衆院選では自民党の小泉進次郎氏が共産党の候補者を退け、5回目の当選を果たした。
【経 済】
コロナ禍で疲弊する市内経済へのテコ入れ策として、市はプレミアム商品券第2弾となる「よこすか『地元のお店』応援券」を発行した。発行総額25億円を計上し、市内事業者の支援と経済の立て直しを図っている。
閉店を予定していたさいか屋横須賀店が継続を望む市民からの声に推され、3月にリニューアルオープンした。本館5・6階をワクチン集団接種会場として提供したほか、南館を「娯楽の殿堂 さいか屋南館eSTAGE」と名称変更し、e-sportsなどを楽しめる施設に生まれ変わった。
市は新型コロナのワクチン接種率向上を目的に、商店街や大型店に協力を呼び掛け、キャンペーンを実施。接種済証明書を提示すると特典を受けられるもので、全国で類のない取り組みとして注目を集めた。
京急久里浜駅近くにある黒船仲通り商店街とすずらん通り商店街を舞台にしたショートムービーが完成。活性化に奮闘する商店街の取り組みをベースにした作品2本をYouTubeで公開している。
JAよこすか葉山は来年3月、林にある本店を移転し、4支店を統合した複合型店舗を久里浜に新設することを発表した。金融・共済事業を強化するとともに、敷地の一画を利用した地元生産者による朝市の開催なども計画。地産地消を推進する。
エンタメで経済活性を図ろうと、2022年1月7日からテレビ放送が始まるアニメ『スローループ』と市内事業者らのタイアップ企画が発表された。飲食店がオリジナルメニューを提供し、ファンの市内周遊などを狙う。現在準備が進められている。
【教 育】
浦賀奉行所開設300周年記念事業の一環として映画制作があった。浦賀小6年生が地元住民の協力を得ながら、昭和時代の8ミリフィルムを活用した『浦賀の映画学校』を完成。現在は市のHP上で視聴できる。
市内の鉄道各駅にちなんだご当地弁当「駅ごと弁当」の発展企画が生まれた。テイクアウト需要を取り入れようと立ち上がった飲食事業者らの取り組みに鷹取小児童が授業の一環としてオリジナル弁当をプロデュース。12月の販売会も盛況だった。
市内23の市立中学校の給食を調理する給食センターが8月、平作小跡地に開設。9月から生徒に提供されている。
市立小・中・養護学校では国のGIGAスクール構想の一環として、4月から生徒にパソコンを順次導入。学習ドリルなど授業での活用を始めているが、休校時の家庭利用については議論もあった。
アートを活かしたまちの活性化の取り組みもあった。衣笠仲通り商店街の空きテナントを活用し、横須賀美術館所蔵の谷内六郎作品のサテライト展示を実施。衣笠小児童が授業の一環で、昭和期を描いた作品や写真から学んだ成果を発表する取り組みも行われた。
久里浜商店街では横須賀総合高校美術部生徒の作品を各店で掲出しており、若い世代を応援しながら商店街回遊に繋げている。
【スポーツ】
1年越しの開催となった東京五輪・パラリンピックで、当初は市内公道を聖火ランナーが走る予定だったが感染状況の悪化で中止に。一般観客から距離を取り、県内数カ所をコースとして実施する形式に変更された。
同大会では田浦町在住のウインドサーファー・須長由季選手が日本代表として出場。市民の応援を受けて挑み、総合12位の結果だった。現在は次期パリ五輪に向けて選手活動を続行しているほか、次世代を対象にした教室で後進の育成に取り組んでいる。
部活動では大津中陸上部が大躍進。「全国中学校陸上競技選手権大会」男子4×100mリレーに出場し、3位に入賞。横須賀勢として初の快挙となった。
横須賀・横浜を拠点に活動する女子サッカーチーム「横須賀シーガルズMEG」が20年ぶりとなる関東大会を制し、全国大会への出場を決めた。
【文化・社会】
成人式はコロナの感染拡大を受け、5月に延期される異例の対応となった。来年は感染対策を講じ、1月9日に中学校区を2分割して横須賀芸術劇場で実施される予定。
交番の老朽化や警察官の人員不足等の課題解消に向け、神奈川県警が4月から県内12カ所で試験運用を開始した「アクティブ交番」が市内でも導入された。警察車両を交番に見立て、その役割を担う。市内では三春町と大津駅周辺で運用されている。
「ワーク(仕事)」と「バケーション(休暇)」を組み合わせた新しい働き方である「ワーケーション」がコロナ禍で注目を集め、和田長浜海水浴場前にコンテナハウスを活用した拠点が誕生した。観音崎京急ホテルでは、平日の長期滞在プランの販売や客室をシェアオフィスとして時間単位で利用できるサービスを設けた。油壷や城ヶ島の車中泊スポットを拠点にキャンピングカーで過ごすプランも売り出された。
家庭内での虐待やネグレクト、過干渉などで居場所を失ったり、コロナ禍で雇い止めになった女性を支援するシェアハウス「アマヤドリ」が市内で稼働した。入居者の衣食住を確保することで、自立を後押ししている。
深田台にある平和中央公園のリニューアルと共に新たなシンボルとなるモニュメントが完成した。直径10m、高さ2mの円形デザインで、中心部から天空に向けて光の柱を放つ仕掛けとなっている。毎月1日と終戦記念日などに「平和の光」と名付けた上空照射を行っている。「日本空間デザイン賞2021」で金賞とサステナブル空間賞をWで受賞した。
汐入町のヴェルニー公園内に新設された観光施設「よこすか近代遺産ミュージアム ティボディエ邸」が5月にオープンした。米海軍横須賀基地内にあった150年前の西洋館を再現した建物で、日本の近代化をリードした横須賀製鉄所の歩みなどを展示している。市が観光施策として注力しているルートミュージアムの拠点施設にもなっている。
神奈川歯科大学が、認知症のケアと予防に取り組む複合型高齢者アミューズメント施設「RB白浜館」を構内に開設。認知症予防を目的とした施設で、手指を動かすことで脳に刺激を与えるアクティビティとしてe-sportsを導入。高齢者と若年世代の交流を図るコミュニケーションツールとしての活用も目指す。来年度に本格稼働させる。
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