今日4日から都内のギャラリーで個展「還元系II」を開く美術家の 小木 久美子さん 下宮田在住
ちぎって貼る、新聞に価値
○…毎日届く新聞。それらを細かくちぎり、1枚1枚貼る。吉報も凶報も、政治経済も事件事故も内容から着想したイメージを美術作品として命を吹き込む。一度解体した文字を貼り合わせることで意味を再構築し、見る者に新たな視点を提議していく。難解と言われる現代美術だが、楽しみ方は人それぞれ。「『この色彩が好き』それで良い。そこから『なぜ?なに?』と感じるものがあれば」
○…母親曰く幼い頃の口癖は「紙と鉛筆」というほど絵が好きだった。9歳の時に描いた写実的なキュウリの絵は周囲から褒められ、嬉しい記憶と共に作品は今も大切に残している。油彩画を嗜む父や近所の洋画家のアトリエが遊び場だった環境も手伝い、画家をめざし武蔵野美術大で油絵を専攻。思う通りの創作ができず悶々とした思いを抱えていた時、アメリカ現代美術に出合い感銘を受けた。
○…作品の画材は国内外のあらゆる新聞。中でも強く印象に残っているのは、2011年3月11日、東日本大震災の日の朝刊だ。発行から数時間後、日本に襲い掛かる未曾有の大災害を知る由もなく、いつもどおり1日の始まりを告げた新聞。そこに人の営みを感じ、失われた多くの魂への哀悼の意と、今この時も何かが起こる前なのではという不安を抱いた。作品に下書きはなく、手を加えながら見えてくるイメージを実体化させるため、完成の明確な線引きにはいつも苦心する。
○…自称「紙ものフェチ」。質感やデザインに魅かれた包み紙や商品ラベルを見つけては収集するほどで自慢の品は数知れず。新聞に着目した作風も、偶然イタリアから届いた荷に入っていた新聞が「ピンクで綺麗だったから」。普段は絵本作家で妹の恵美子さんとデザイン事務所”QKユニット”を構え、ポスターやポストカードを手掛けるなど紙づくしの生活。納期とのせめぎ合う日々を送るが、その表情には好きを生業とする幸福感が満ちていた。
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