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東京大学三崎臨海実験所異聞〜団夫妻が残したもの〜 文・日下部順治、吉本尚その26 番外編【3】

掲載号:2019年9月6日号

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 團夫妻にとってのライフワークであった発生学とは、受精とその後に起こる一連の細胞分裂を通じて様々な臓器がどのように生まれ、生物体がどのようにして完成していくかを探る学問で、そのためにウニはうってつけの実験材料でした。

 人とは似ても似つかぬ姿のウニではありますが、系統分類上は人もウニも後口(こうこう)動物に属し(消化管の形成過程で肛門が先に、口があとで生じるグループ)、ウニの発生初期は人体が形成される初期段階とそっくりなのです。

 高級な寿司ネタとして我々が口にするウニは、その卵巣または精巣なのですが(味わいは多少違うもののそこまで気にする人は少ないかもしれません)、生きたウニの雌雄を見分けるのは難しく、実験では「アリストテレスの提灯」と呼ばれる部分を切り取ってそこに塩化カリウム液を少し入れてやると、反対側から雌なら黄色っぽい粒状の卵子が、また雄なら白い乳液状の精子が放出されるので、それらを混ぜ合わせることで受精が観察できるわけです。

 ところで、実験所に滞在中の楽しみの一つに、時々舟で海に出掛けることがありました。というのは、実験室内には海水の出る蛇口があったのですが、ウニの幼生はなぜかその水では育たず、沖合から汲んできた新鮮な海水が必要だったからです。舟は艫(とも)に長い艪(ろ)が1本付き、それを中程に立って両手で漕ぐという和船で、その独特の漕ぎ方もすぐに板につきました。

 宿舎は海岸裏手の高台にあった大きな和風家屋で(現在そこは新しい実験施設となっています)、その南面廊下側に芝生の庭が広がっていて、その周囲をよく見ると所どころわずかな窪みが見られました。実はそれが三浦一族滅亡の舞台、新井城を囲んだ堀跡だと聞いて何百年も昔の戦国の世に想いを馳せたものです。

 そんなことをあれこれ回想していて、ふと私(吉本)たちが東京方面からやって来た日のことを思い出しました。当時、電車はまだ三浦には達していなかったので、一番便利な交通手段は横浜から30分おきに走る三崎行き急行バスでした。まだ道路渋滞もない時代でもあり、車両も観光バス型のものが使われていたので、ちょっとした小旅行の気分が味わえました。運賃は百何十円かだったと記憶しますが、車掌さんから百円の回数券(10円券11枚綴り)を買って、下車時に全部渡すと10円だけ差額の支払いが少なくて済み、車掌さんも笑いながら受け取ってくれたものです。   (つづく)
 

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