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三浦 コラム

公開日:2020.05.15

三浦半島 草花歳時記
第7回 竈(かまど)の神も嫌う「トベラ」
文・写真 金子昇

 三浦半島の沿海岸には常緑低木の「トベラ」が多く生育しています。4〜6月に香りを放つ白色の花が咲き、花色は白から黄色へと変色します。秋には球状の緑色の果実をつけ、熟すと褐色になって3つに裂け、中から粘性を持つ橙赤色の種子が出てきます。種子には栄養分がほとんどなく、薄い膜のみのため最小限のエネルギーで鳥に食べさせ、子孫を残そうとする賢い倹約家といえます。



 トベラは沿海岸の傾斜地では、背丈を低くし枝葉を下方へなびかせるようにしています。こうした急斜面は痩せた土壌で、絶えず海からの強風が吹き付けるため、海岸特有の低木林(風衝低木林という)をつくります。このような景観はマサキ、シャリンバイ等にも見られます。



 枝や葉を切ると独特な悪臭を放ち、火にくべるとさらに強くなり鼻が疼きます。別名「オコウジンギライ」(御荒神嫌い)といい、竈で燃やすと「竈の神」(荒神)様が嫌がることから名づけられました。またトベラの名の由来は、この悪臭が鬼を祓うといわれ、節分にはトベラとヤツデの葉と枝を入口の扉に挟み、鬼を追い祓うことから「扉の木」→トベラとなりました。

 

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