三崎警察署・城ケ島駐在所の小畠正人警部補(60)が、3月いっぱいで定年退職を迎える。着任から14年。住居を兼ねた同所で、昼夜問わず島民を見守り続けた。小畠さんは「少々口は悪いが、温かみのある皆さんに支えられた。ここに来て正解でした」としみじみ振り返った。
「おーばたさーん」――。目の前を通り過ぎる車の中から自身の名前を呼ばれるたびに、笑顔で手を振る小畠さん。「島には3つの灯台がある。2つは海を、1つは島民を守っている」と今では島のランドマークとなった駐在所を指さす。
相模原市出身の小畠さん。「柔道2段の腕っぷしを生かし、正義の味方になりたい」と1982年に県警の門を叩いた。第二機動隊や高速道路交通警察隊を歴任後、2010年3月に同所では4代目の「島の駐在さん」として着任。「地域住民との触れ合いは警察官の基本」と自ら希望した。
子どもの登下校時の見守りや島内のパトロールのほか、井戸端会議に顔を出したり、家庭を訪問したりして詐欺電話の対処法を指導するなど、島民の安全安心のために毎日靴底を減らした。そんな懸命な姿に初めは懐疑的だった島民も、やがて「家族」のような存在として接するように。
最も印象深いエピソードは東日本大震災。島も大きな揺れとともに停電となり、テレビが見れないため、情報が入ってこなかった。大橋は通行止めになり、不安と焦りを抱く島民を守ろうと、地元消防団とともに高齢者をリヤカーに乗せて高台に避難させるなど、出来ることは全てした。
引退の報せを聞きつけた城ケ島観光協会の高橋真樹子会長は2月22日、これまでの功績を称え、小畠さんに感謝状を贈った。「違法駐車を注意した若者から絡まれたね」「救急車の音を聞けば、すぐ現場に駆けつけてくれた」。三崎署を訪れた島民たちの話に、さまざまな思い出が一気に押し寄せ、小畠さんは目頭を熱くさせた。「一人では仕事が成立しなかった。皆さんの協力のおかげ」
小畠さんは退職後、市内に残って漁業関係の仕事に就くという。「これからも島民の皆さんとお茶でも飲みながら第二の人生を楽しみたい」。爽快な顔に潮風が吹いた。
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