書籍『藤沢の道祖神を訪ね歩く』を文書館などへ寄贈した 山下 健（たけし）さん 立石在住 74歳
尽きぬ探究心と行動力
○…子宝の神や旅の神など、八百万の神の中でも特に多くの性格を持つ道祖神。先人たちの資料を基に市内をくまなく歩き回り、『藤沢の道祖神を訪ね歩く』と題した書籍にまとめた。掲載されている道祖神は石仏も含め２０４基。「崖の上にあるものや、人の家の庭にあるものなど、探し歩くのは非常に楽しかった。草の中に隠れている道祖神を見つけたときなどは嬉しい反面、ついつい他の人に教えたくないと思ってしまう」と朗らかに笑う。
○…宮崎県出身。高校を卒業後は銀行に勤め、鹿児島や長野など、全国14カ所を渡り歩いてきた。「転勤先では各地の美味しいものをご馳走になった。出向先でも著名人をはじめ、たくさんの人と話すことができ、楽しく仕事をさせてもらった」と懐かしむ。中でも温暖で富士山もきれいに見える藤沢を気に入って居を構えた。人好きと読書好きが高じて、退職後は市の生涯学習大学を受講。「藤沢地名の会」との縁ができたことで、街歩きや郷土歴史への関心を深めるように。
○…地名の会で活動する中で藤沢は近隣地域と比べ、道祖神についてまとめた資料がとても少ないことに疑問を感じ、自らまとめはじめた。「資料にあってもなくなっていたものもあったが、調査を通じて見つかったものもあった。まだまだ隠れている可能性は十分にある」と宝物を探す子どものように目を輝かせる。
○…本を完成させたことで、「『道祖神の山下さん』と仲間内で呼ばれた僕も、これで道祖神は卒業かな」と次なる目標を目指す。途中までやり掛けたお遍路の続きや、「信念を曲げず、庶民から厚く慕われていた」と敬愛する親鸞聖人が辿った道を歩いて制作する生涯記への興味など、やりたいことは尽きない。「本の知識や先輩の資料の丸写しだけでは何も書けない。残された時間でやりたいことを一つ一つ、味わいながら片づけていきたい」と目を細めて微笑んだ。
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