創立30周年を迎えた「日本画なでしこ会」で会長・講師を務める 井出 文洋さん 黒部丘在住 59歳
「絵は本能的な表現」
○…画用紙を赤い絵具で豪快に染めて見せると、園児たちは目を丸くして驚いた。今年10月、「なでしこ会」の震災チャリティー活動で縁を持った石巻市の幼稚園を訪れた。園児も歓声を上げながら等身大の画用紙に向かい、自由奔放な色使いで「抽象画家も顔負け」の作品を描いたという。「子どもは字を書く前に絵を描くでしょう。絵は自由。本能的な表現なんです。上手に描こうとすると、表現が狭くなる」と、同会で日本画を学ぶ会員にも自由な自己表現を呼びかけている。
○…ニューヨークの画家、ジャクソン・ポロックが絵具を叩きつけるように描く姿を見て、絵の自由さに衝撃を受けた。多摩美術大学在学中に渡米、芸術家の卵が集まる「ニューヨーク・アート・スチューデンツ・リーグ」に学んだ。「世界から日本画がどのように見られるのかを知りたかった。海外では珍しく、関心を持ってもらえた」と振り返る。大学院を卒業後、ニュージーランドのキャンタベリー国立美術館での個展をはじめ、国内外で日本画の作品を発表している。
○…平塚市主催の文化教室で講師を務めた縁で、当時の受講者と同会を立ち上げた。現在は90代〜40代の会員23人と、活動を続けている。「生徒と先生という関係ではなく、皆で創作を楽しんでいる。ライフワークの場、生き方のベースになっている」と目を細める。母校の大磯高校でも約20年間、講師を勤めた。「プロの画家として活躍する生徒もいて、個展を見に行くのは嬉しいものです」と笑顔で話し、良き教育者としての一面をのぞかせる。
○…作品テーマを「自然」とし、豊かで複雑な色彩で人物や動植物、風景を描いてきた。「自然は美しいだけではなく、東日本大震災に見るように脅威も含んでいる。そんな美しさの中にある緊張感、自然に向きあう人間の姿を描きたい。自然崇拝は日本人の生き方でもある」と自らの命題について語っていた。
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