神奈川県技能者等表彰で卓越技能者に選ばれた 島津 覚さん 中堂在住 50歳
受け継がれる職人魂
○…この道32年、島津建具店の2代目。優れた技能と、県建具協同組合で携わるものづくり体験教室などの仕事が評価され、卓越技能者に選定された。「理想の仕事は、速さ・美しさ共に納得できる物を作り続けること。今まで以上に頑張りたい」と言葉の端々に職人魂をにじませる。
○…寺社や住宅のドア・障子などを作成する建具業には一つとして同じ仕事がない。50本以上ある鉋(かんな)やのこぎりを巧みに使い分け、物言わぬ、しかし生き物でもある木材と一人で向き合う。「建物として息づき続けるのがいいよね」と、現在手がける建具を撫でる。
○…おもちゃ代わりに工具と木切れを与えられた子供時代。自宅に隣接する工場を遊び場に、生粋の職人肌だった父親の背中を見て育った。高校卒業後「自分の好きなことをやるといい」と言われ、自然に今の道を選んだ。「喜んでいたかは分からないけれど、親父からは『まず他人の釜の飯を食ってこい』って追い出された」と笑う。藤沢で3年修業した後、父と背中を合わせて働き始めた。「互いに職人肌だから、似たもの同士、15年間、喧嘩もよくしました」。36歳の時に初めて臨んだ全国技能グランプリ。仕事の合間に練習を重ね、全国2位を勝ち取った。栄冠から束の間、同年に父親が亡くなった。「入賞、喜んでもらえました。『あれだけ悩んだ姿は見たことない』って言われたのが懐かしい」とぽつり。
○…最近の楽しみは「運命の出会いを果たした」という愛車「ミニクーパー」とのひと時。一日の仕事が終わる頃、自宅の窓から工場に流れ込む愛妻料理の香りが疲れを癒す。19歳の息子と15歳の娘の父親。「継いでほしいとは言わないです。建具業界は厳しいからね。でも、自分のやりたいことをやってほしい」。奇しくも自身の父と同じ言葉を投げかける。「今は減ったよね」という昔気質の職人魂。父から子、またその子へと受け継がれていく。
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