「平塚華道協会」会長を務め、華道展を開催する 中村勝光(せいこう)さん 長持在住 80歳
華道のこころ、若い人に
○…昔から広く親しまれていた華道も、近年では若者離れが進んでいる。「若い人が来なければ、こっちから行こう、という発想です」と、デパートの催事場などが主だった華道展を、初めて大学キャンパスで開くことに決めた。「何せ初のことばかりで」と言い、準備に約2年を費やす大企画。会場となる東海大学に足を運び、生徒との交流や「建学祭」にも顔を出す熱の入れよう。華道展では、学生による陶芸作品を花器に用いる予定だ。
○…「宏道流東海道副官領」の顔を持つ。華道を始めたのは、6歳の時。「華道の先生が床の間へ花を生けに来ていたので、ちょっかいを出していた」のがきっかけ。戦時中の背景もあって、父からは反対されたが、母の協力でこっそり自転車で寺田縄の教室まで通ったエピソードも。
○…花器に限らず器が好き。企業勤めの後、1983年から約20年、東京都銀座で「寿月(じゅげつ)」という器店を開いた。問屋から仕入れるのではなく、日本料理店など顧客からの要望に合わせた古き良き品を復元して販売した。思い出に残るのは、ふたの裏に蜘蛛の巣が描かれた汁椀の注文を受けた時だ。仕上がった品を届けると、顧客から「(ふたの裏に)汁が乗らない」とお叱りを受けた。温かい汁物にふたをすると付く水滴が、朝露に輝く蜘蛛の巣を表現するという粋な趣向を知らなかったのだ。その後、無事納品できたが「あの時は肝が冷えましたね」と笑う。
○…「『根っこ』にも目を向けようと思いまして」と、盆栽を育て始めた。地域の盆栽会にも参加し、「植物から若い命、生気をもらっている」と屈託のない笑顔で話す。池坊流で出会った愛妻を11年前に亡くしたが、近くに住む娘らが顔を出す。近所のつながりを作るために「長寿会」にも入会した。変わらない笑顔を向ける妻の写真を見て、しみじみとぽつり。「好きなことができるのは、とても幸せなことです」
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