宮本太鼓連の会長として地域文化の伝承に尽力する 松本 尚眞さん 中井町井ノ口在住 75歳
太鼓に乗せ 響け郷土愛
○…暮れなずむ蓑笠神社の神楽殿に、甲高い太鼓の音色が響く。中井町井ノ口の総鎮守である蓑笠神社で、毎年4月の例大祭に合わせて披露される「宮本太鼓連」の演奏指導に携わって10年以上。祭り前の10日間という短期間で演奏技術を叩き込み、普段はひっそりと静まり返った神社で指導に声をからす。
○…太鼓連の叩き手は、中学生から大学生まで約20人。小学校高学年の児童も太鼓連の卵として練習に参加する。「『太鼓が好きだから町に残りたい』なんて言う子もいるんだよ」と、孫ほど年の離れた子どもたちを厳しくも優しい眼差しで見守る背中に、伝統を絶やすまいという気骨がにじむ。一方で、自分以外の指導者不在に危機感も覚えていた。井ノ口地区の宮上・宮前・宮向・宮原・葛川自治会が協力して、今年4月に太鼓連の組織を一新。持続的な活動と後進の育成に、地域一丸で取り組む。
○…幼少期から、神社は格好の遊び場だった。「野球をしたり、御神木のケヤキに上ってフクロウの卵を見つけたり。親フクロウに頭をつつかれたこともあったな」と笑う。例大祭では、地元青年団が太鼓を叩く華々しい姿に憧れながら、夢中で山車を引いた。当時、子どもは太鼓を叩くことができなかったため、消防団が使う竹のはしごを太鼓に見立て、見よう見まねで演奏を覚えたという。成人を迎えて太鼓連に加入し、はや半世紀以上。「今は叩くことより、太鼓の文化を伝えることが楽しい。今の若い衆が、いつか指導者になってくれたら」と願う。
○…定年退職後は、自治会や神社の役員、シルバー人材センターでの活動など、より地域と接する機会が増えた。畑でのそば作りにも興じるなど、太鼓の指導時とは打って変わって悠々閑々な暮らしぶり。「住めば都というけれど、ここで生まれ育った身としてはずっと都」。時代を超え、郷土に響く太鼓の音が耳をなでる。
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