2016年度神奈川県卓越技能者として表彰された 小島 八重次(やえじ)さん 下大槻在住 78歳
”鳶の心意気”大切に
○…鳶(とび)工として長年従事し、足場や擁壁工事において高い技能を有することから、「神奈川の名工」と称される県卓越技能者に選出された。現在は、有限会社小島組の代表として現場で指揮を執る傍ら、(一社)県鳶工業連合会に所属し、技能検定の指導員や検定委員等を務め、後進の育成にも尽力する。「職人になって50余年、今までの仕事を認められたようで嬉しい」。そうほほ笑む姿に自信と誇りが見え隠れする。
○…9人兄弟の長男として秦野市で生まれ育つ。中学卒業後は「将来を考え手に職を」と21歳で鳶職人に。「最初の現場は熱海だったかなぁ」と首を捻りながら遠い記憶に思いを馳せる。20代後半で小島組を立ち上げ、時同じくして結婚。1男1女に恵まれた。若くして妻に先立たれ、その後は男手ひとつで仕事と育児を両立。その息子は現在小島組の主力として活躍している。「事業を継ぐと言ってくれた時は本当に嬉しかった」。言葉少なに語るが、目じりが下がり表情が一瞬和らいだ。
○…これまでの職人人生を振り返り、1番感謝することは、大きな怪我もなくやってこられたことだという。高所での作業が多く、危険を伴うこともある。昔、従業員が怪我をした事があったといい、「怪我人が出ると何より辛い。とにかく安全第一でやっています」と力を込める。
○…大切にしている言葉は『鳶の心意気』。「義理と人情とやせ我慢。鳶はそんな世界」と笑う。自身の仕事をこなしながら後進の育成など様々な役を引き受けるのは、その精神に基づいての行動。「今はあまり言わないけど、私は大切にしている言葉です」。実は、8年前から秦野鳶工組合の組合長も務めている。年始の一大イベント、出初め式で披露する梯子乗りの練習が間近に控える。「木遣り、纏、梯子乗りは鳶の伝統文化。守り抜いていかなくてはいけない」。自身の持つ技能の継承に余念がない。
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