連載【6】 検証・小田原の課題 お城通り地区再開発
小田原駅東口から小田原城にむかって広がる1・2ヘクタールの広大な土地。6回目の今回は、「お城通り地区再開発事業」の経緯と今後の展望について探る。
広域交流に必要な施設とは
▼昭和59年にスタートした同地区の再開発事業は、平成元年に小田原市と同地区の民間地権者が再開発準備組合を発足。同11年に県と市が共同で整備構想を策定し、同19年に事業施行者が決定した。翌20年5月、現・加藤市長が再開発地区に市民ホールを核とした施設建設を標榜し当選したが、鉄道脇の立地による騒音や振動などを理由に「駅前にホール」はご破算となり、再び商業施設を中心とした開発に舵がきられた。同22年6月から8月にかけ、市は改めて再開発の事業化について民間事業者に意向調査を実施。10社から回答があったが、事業者選定の即時決定は不可能という結論で現在に至っている。
▼市は同23年度から通りの緑化歩道整備を「公共事業」として先行。既設歩道を約2・5m拡幅し、低木を中心とした植樹帯を設け、駅からお城までの歩行空間を確保する工事を進めている。市街地整備課は「駅前の歩道の整備を進めることで、再開発事業への参画意欲を向上させることに先導的に取り組むため」と説明、12人の民間地権者も出来るところから進める姿勢に賛同しているという。
▼再開発の基本構想では、同26年度からの供用開始を目指す駐車場棟と、建設から運営までを事業者に委託する広域交流施設棟を建設予定だ。駐車場棟は屋上付きの5階建てで、1階部分は市民サポートセンターや女性プラザなどの公共・公益施設、2階から5階が駐車スペースとなり、350台程度の収容を見込んでいる。広域交流施設棟は駐車場棟の完成後、概要を市で提示した上、事業者の公募を行うとしている。事業者が決定していない現在では、広域交流施設棟による固定資産税や家賃、施設運営費用などの目算すらたっていない。駐車場棟を先行して建設することについて同課は、利用者に需要があり長期安定的な売上げが見込める施設であるため、「より参画意欲向上につながるのでは」という見解を示している。
▼既存の周辺商業施設や公共施設と「共存」が難しければ、建設の意味さえ考え直さなければならない。点在する公共施設が駅前に集約されれば、市民の利便性が高まるメリットもあるが、一方で駅前の更なる一極集中や家賃次第では、市民負担につながる可能性もある。今回の市長選では大きな争点となっていない感のある再開発。市民の貴重な財産である駅前の一等地の活用となるため、例え建設ありきの事業計画であっても、維持管理費などコスト面を意識した計画を示してほしい。
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